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[特集]

世界のベトナム人街を訪ねて【ベルリン編・前編】

2025/07/06 10:30 JST更新

(C) T.Sasaki
(C) T.Sasaki
small>(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。)

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ベルリン:日本や中東とミックス、他国と巧みに共存するベトナム

 若かりし頃、東ドイツで働いていた思い出について、今は故人となられた高齢のアパートのオーナーが語ってくださったことがある。その頃、オーナーと同じように労働者として東ドイツに派遣され、共に働いた同郷の仲間が多かったという。ベルリンの壁崩壊は1989年。それ以前から、ドイツには多くのベトナム人が住んでいたようだ。当時から住み続け、定着している人もいるに違いない。ドイツに根付くベトナムを見ようと、オーナーがかつて住み、働いていたベルリンを訪れた。

東ドイツのベトナム人労働者たちも目にしたであろうベルリンの壁

すしとベトナム料理

 ベルリンでは、居住者、観光客問わずベトナム人とよくすれ違う。通りでは、ベトナム料理店も頻繁に見かける。現地のベトナム料理店で面白いのは、すしも取り扱う店が多い点だ。ドイツ人好みなのか、アジアでひとまとめになっているのか、その理由は不明だが、のり巻きだけでなく握りずしもあり驚くほど本格的だ。

ドイツのベトナム料理店を象徴するかのような店名

 店先の木陰に椅子やテーブルを配置した雰囲気の良いベトナム料理店があったので、お手並みを拝見することとした。落ち着いた雰囲気の店内では、来店客の大半を占める年配のドイツ人客が、慣れない箸でベトナム料理を楽しんでいる。ドイツにはトルコからの移民が多く、通りにはケバブ店が軒を連ねる。ドイツ人がケバブを食べている様子も見られ、日常的な食べ物として定着している様子だ。果たしてベトナム料理は現地で需要があるのか、最初はいまひとつ見えない部分があったが、この店のにぎわいを見る限りは結構親しまれているのだと思われる。

雰囲気の良さで年配のドイツ人からも人気のベトナムレストラン

落ち着いた雰囲気のレストラン内部

 この日は後に予定が入っていて時間的に余裕がなかったため、炒めフォー(Pho xao)と、サケののり巻きを持ち帰りで注文。用を済ませた数時間後に食べてみたが、ここで後悔してしまった。

 冷めても味わいが良く食べ応えがあったので、やはりレストランでできたてを楽しむべきだったとつい悔やんでしまった。炒めフォーは、ズッキーニやルッコラなど現地で入手しやすい野菜と牛肉がたっぷり入った、甘めの味わい。醤油を少しずつ足しながら食べるとちょうどいい。のり巻きは、巻き具合がやや緩かったが、サケが新鮮で柔らかく、ご飯の炊き具合もちょうどよかった。

ちょっと変わった組み合わせ。サケののり巻きと炒めフォー

 考えてみると、街でベトナム料理店をよく見かけるということは、それだけ店同士の競争も激しいということ。その中を生き抜く店の料理人には、ベトナム料理でもすしでも器用にこなす力量が求められるのかもしれない。

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ベルリンのドンスアン

 日曜日の午前9時ごろ、ベルリンの東側に位置する市場「ドンスアン・センター」へ路面電車で向かった。休日の朝だというのに、電車の中は座れる座席がないほど人が多いのがとても意外だった。ところが電車がとある停車場に着くと人々がどっと降り始め、車中はたちまちがら空きに。実はこの停車場「Hertzstraße/ ndustriegebiet」こそがドンスアン・センターの最寄りとなる。降りて徒歩1分もかからない、目と鼻の先に「DONG XUAN CENTER」と書かれたゲートがあった。

ドンスアン・センターのゲート

 降りた人たちは、一様にドンスアン・センター方面へ向かっていった。ベトナムをはじめとした東洋系の人のほかヒジャブをかぶった中東系の人たち、ドイツ人など、あらゆる人種が一斉にゲートをくぐり、それぞれ目的の店へと散らばっていく。特定の店の方向が分かっている様子だということは、この市場には常連も多いのだろう。

 ドンスアン・センターはご存じの通り、ハノイ市にある大規模な市場の名称と同じだ。しかしハノイ市のドンスアン市場の建物と比べると、ベルリンのドンスアン・センターのほうがもっと大きい。なにしろ敷地内には長さ20mほどに及ぶ縦長の屋内市場が6棟のほか、その他倉庫などが並んでいるのだ。屋内市場の中は、中央にまっすぐ通る1本の通路の脇に各店舗が隣り合い配置されている構造。多くの場合、衣類やファッション雑貨、理髪店やネイルサロン、食品店が占めている。市場というと多少雑然とした部分もあるが、ドンスアン・センターに限っては整然とした印象を持った。

ドンスアン・センターに並び立つ屋内市場の建物


後編に続く


【Text & Photo by T.Sasaki】 

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