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[特集]

「音」で熟度を見極める、ドリアン収穫のプロ

2025/08/17 10:12 JST更新

(C) vietnamnet
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 南部メコンデルタ地方ドンタップ省(旧ティエンザン省)在住のグエン・チョン・タンさん(男性・26歳)は、ドリアンを収穫する職人チームの主力の「ドリアンカッター」を務めている。タンさんの的確な判断力のおかげで、チームがドリアン農園のオーナーに補填金を支払うことはほとんどない。

 タンさんが、ドリアンの木に登って果実を収穫する様子を収めた1~2分の動画をインターネットに投稿したところ、再生回数は数百万回に達し、数十万件もの「いいね!」がついた。

 タンさんの動画の魅力は、ドリアンを収穫する、プロフェッショナルで素早い動きにある。手に持った小さなナイフの柄でドリアンをコンコンと叩き、熟しているかどうかを瞬時に判断し、刃で茎をさっと切る。たったこれだけの動きだが、視聴者は釘付けになってしまうのだ。

 「この仕事に就いて8年経ちますが、ほぼ7年は『カッター』をやっています」とタンさんは語る。

 ドリアンは経済的価値が高く、生産者にも取引業者にも大きな収益をもたらす。そのため、タンさんのような熟練の職人は引っ張りだこで、報酬も高い。なぜなら、誰にでもできる仕事ではないからだ。

 「ドリアンの名産地」である旧ティエンザン省カイライ(Cai Lay)で生まれたタンさんにとって、ドリアンを叩いて熟度を確認し、収穫するという仕事は幼い頃から身近なものだった。

 タンさんは18歳の時に本格的にこのドリアン収穫の仕事を学び、技術を習得すると、友人たちと10人ほどの収穫チームを結成した。チームには、木に登って果実の茎を切る「カッター」に、木の下で果実を受け取る「キャッチャー」もいる。

 何年もの間、タンさんのチームは南部メコンデルタ地方の各地のドリアン農園を飛び回り、タンさんは常にチームの主力として活躍してきた。

@trongtannguyen08

Đi cắt sầu riêng mà thằng này chung tình quá kkk

♬ nhạc nền - Nguyễn Trọng Tấn



 タンさんの主な役割は、木に登ってドリアンの果実を叩き、収穫に適した熟度かどうかを見極めることだ。簡単そうに聞こえるが、農園のオーナーに損害が出ないよう、経験と的確な判断力が求められる。

 「十分に熟していて、果肉の黒ずみや空洞がないドリアンを選別するのは、誰にでもできることではありません」とタンさん。8年間もドリアンを収穫してきた経験から、タンさんは「叩けばわかる、切れば的中」と自信がある。ほんの数回叩いて音を聞くだけで、収穫の基準を満たしているかどうかを瞬時に判断できるのだ。

 「ドリアンは美味しく熟していないと収穫できません。皮が緑色で棘が鋭いものは、果肉が美味しい傾向があります。でも、熟していない果実と熟した果実を見極めるのは難しく、経験がものを言います。時には手と目を使って、感覚を頼りにしないといけないんです」とタンさんは語る。

 タンさんたちは毎朝6時から農園で作業を始める。チームには「カッター」が4人おり、残りは「キャッチャー」だ。収穫作業は18時まで続き、収穫のピーク時には22~23時まで及ぶこともある。

 以前、タンさんの仕事は少ない時もあれば多い時もあり、季節によっても変動していた。仕事がなく、長いこと休まなければならない時期もあった。しかし、この2~3年はほとんど一年中、ドリアンを収穫している。端境期でも5~10日の休暇を挟んで、再びあちこちを飛び回っている。

 南部メコンデルタ地方の収穫シーズンが終わると、タンさんのチームは場所を変え、今度は東南部地方ドンナイ省(旧ドンナイ省と旧ビンフオック省)の農園でドリアンを収穫する。

 タンさんのチームは毎日約10~20tのドリアンを収穫する。1人当たり1日数tだ。「木が高いか低いかは農園によって異なりますが、木が低ければ、より多く収穫できます。ドリアン10tを収穫して報酬は2000万VND(約11万2000円)で、これをチームの全員で分け合いますが、『カッター』は取り分が多いんです」とタンさんは語る。

 これは、タンさんにとっては十分に魅力的な報酬だ。さらに、時間の融通が利き、仲の良いメンバーと一緒に仕事ができるという点でも、心にゆとりを持つことができる。

 しかし、決して楽な仕事というわけではない。「報酬が高いということは、大きな責任を伴うということでもあります」とタンさん。タンさんたちは、基準を満たした品質のドリアンを収穫しなければならない。果実が熟していなければ、農園のオーナーに多額の補填金を支払わなければならないこともある。「幸い、我々のチームは、そういった状況になることはめったにありませんけれどね」とタンさんは話す。

 さらに、炎天下や豪雨といった過酷な天候に直面することも日常茶飯事だ。「天気が良ければ作業もしやすいですが、雨や風の日はとても大変です。それに、雨がたくさん降ればドリアンの品質に影響を与えてしまい、農園のオーナーも納得してくれません」。

 熟してしまったドリアンは長くはもたず、嵐であろうと濡れながら収穫するしかない。木に登れば手足は痛くなり、時には熟したドリアンが落ちてきてけがをすることもある。

 それでも、タンさんはどんな仕事にもそれぞれ苦労がつきもので、それが普通なのだと考えている。そして、あと数年間はこの仕事を続け、十分な資金ができたらホーチミン市にドリアンの販売店を開く予定だという。

 「収穫であれ、販売であれ、私の人生はこのドリアンとともにあるんです」とタンさんは語った。 

[Vietnamnet 06:00 19/06/2025, A]
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