VIETJO - ベトナムニュース 印刷する | ウィンドウを閉じる
[特集]

ホーチミンのベンタイン市場で半世紀以上愛されるチェー店

2025/12/28 10:19 JST更新

(C) VnExpres
(C) VnExpres
(C) VnExpress
(C) VnExpress
(C) VnExpress
(C) VnExpress
(C) VnExpress
(C) VnExpress
 チュオン・ティ・トゥエット・チンさん(女性・63歳)は、7~8歳のころからホーチミン市のベンタイン市場で母親のチェー(ベトナム風ぜんざい)の屋台を手伝っていた。そして、50年以上にわたり市場に身を置き、母親が残したチェー店を受け継いで切り盛りしている。

 毎日午前10時になると、チンさんはベンタイン市場の西門近くにある店を開ける。広さ4m2の小さな店内には、数十種類の色とりどりのチェーがガラスケースに並んでいる。50年以上もの間、何世代にもわたって多くの人々に愛されてきた店だ。

 チンさんによると、このチェー店は1968年に母親が始めたもので、当初は旧10区のホアフン市場で小さな天秤棒の露店として営業していたが、後にベンタイン市場へと移った。幼いころから母親を手伝っていたチンさんは、2001年に母親が亡くなると、家業を引き継いだ。以来、25年間にわたり伝統的なレシピを守り続けている。

 店主であるチンさんの1日は午前2時に始まり、材料の仕込みとチェー作りを行う。店では温かいチェー9種類と冷たいチェー9種類の計18種類を提供しており、中でもミックスチェー、バナナケーキのチェー、ハスの実のチェーが特に人気だという。1杯の価格は2万~3万VND(約120~180円)だ。

 このチェー店は、市場とともに幾多の苦難を経験してきた。特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の時期には、観光業が停止し、一時はベンタイン市場を訪れる客の数が新型コロナの流行前と比べて9割以上減少した。

 こうした厳しい状況に対応するため、チンさんは試行錯誤しながらフードデリバリーアプリに出店した。現在では、オンライン注文が日々の売上の大きな割合を占め、店内で飲食する客の多くは市場での買い物後に立ち寄る観光客だという。1日の販売数は約300~500杯に上る。

 チンさんの店の魅力の1つは、店主の多言語対応力にある。チンさんは独学で英語とフランス語、韓国語を身につけた。チンさんによれば、外国人客の多くはココナッツミルクを使ったチェーを好み、ドリアンのような強い香りのあるものは避ける傾向があるという。

 米国やカナダ、オーストラリアで暮らす多くの越僑(在外ベトナム人)が帰国のたびにチンさんの店を訪れるほか、シンガポールや香港、タイなど近隣の国・地域の人々が帰国するときにチェーを買って帰ることもある。さらには、液体のチェーを自国に持ち込めない欧州の客の中には、バナナケーキだけを買って帰り、帰国後にココナッツミルクと一緒に食べるという人もいる。

 チンさんの店は、ベンタイン街区のナイトツアーの立ち寄り先にも含まれている。このツアーは、夜間経済(ナイトタイムエコノミー)の促進と、長年守られてきた文化的価値の保存を目的として、ホーチミン市が打ち出した観光商品だ。

 ハノイ市から訪れたという観光客のフオン・ランさん(女性)は、暑い中で市場を散策した後、初めてこのチェー店に立ち寄った。ランさんは、同行した友人2人とともに、ミックスチェー2つとバジルシード入りのハスの実のチェー1つを注文した。「清潔なレイアウトと居心地の良さが印象的でした」とランさんは話す。

 現在、ベンタイン市場前の広場は、建築遺産を保存するため、総額1450億VND(約8億6000万円)を投じて改修する計画が提案されている。こうした中、チンさんの店のような老舗の屋台は、客を引き留める上で重要な役割を担っている。チンさんは、「市場で商いを続けるように」という母親の言葉を守り、支店を出したり、他のところへ移転したりするつもりはないと話す。

 定年を迎える年齢になっても、チンさんは毎朝、1つ1つの鍋に心を込めてチェーを作っている。将来は孫娘に店を任せ、ホーチミン市中心部の食文化の伝統を継承してもらいたいと考えている。

 「あと5~10年で引退して、チェー店は孫娘に任せて、貯めたお金で旅行を楽しみたいと思っています」とチンさんは語った。 

[VnExpress 06:00 22/12/2025, A]
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved.


このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。

印刷する | ウィンドウを閉じる