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[特集]

クアンガイ省に息づく2000年の伝統、岩場で作る幻の塩

2026/07/19 10:32 JST更新

(C) VnExpress
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 南中部地方クアンガイ省ゴーコー村の岩場では、製塩を行う住民が、天日にさらした海水を岩のくぼみに少しずつ注ぎ、塩を結晶化させている。こうして作られた塩は、観光客へのお土産として提供されている。

 6月末のある朝、ブイ・ティ・バンさん(女性)は、サーフインのゴーコー村から約500m離れた岩場へと歩いて行く。そこは、夜通し打ち寄せていた波が、ちょうど引いたばかりの場所だ。

 岩の表面には、あちこちに海水のたまったくぼみがあり、太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。バンさんは身をかがめ、岩の上でゆっくりと花が咲くように大きく成長しながら結晶化していく塩を見つめている。

 バンさんは、父親が語る塩作りの話を聞いていた幼い頃から、この仕事に慣れ親しんできた。70歳になった現在、バンさんはこの特別な塩作りの方法を守り、後世に伝える役割を担っている。

 「この仕事は古くからあり、代々受け継がれてきました。私たちは昔ながらの製法を守りつつ、よりきれいな塩ができるように改良を加えています」とバンさんは語る。

 塩作りに使われる岩場は海に面しており、比較的平らだ。バンさんは、波をかぶらない高い位置にある自然のくぼみを選び、そこに海水をたっぷりと注ぎ入れ、塩分濃度を高めるために約7日間天日にさらす。

 この「塩田」では、砂を混ぜた粘土でくぼみの周りに土手を作り、そこに天日にさらした海水を少しずつ注いでいく。

 3~4日経って、ようやく塩が結晶化し始める。この間、バンさんは常に気を配っていなければならない。雨が降りそうになれば、急いで海水を蓋つきの容器に移し替え、日差しの強い真昼には、塩の結晶化を早めるために塩分濃度の高い海水をさらに注ぎ足す。

 「塩が結晶化する前に雨が一度でも降ってしまえば、10日間の苦労が水の泡になってしまうんです」とバンさんは話す。

 塩の結晶が底に沈殿する一般的な製塩方法とは異なり、サーフインの塩は水中で浮かぶように塊となり、結晶同士が絡み合いながら大きくなっていく。

 収穫時には、塩の塊を取り出し、水に溶かして汚れを落としてから、大きめの粒をふるい分け、完全に白く乾くまでさらに干す。出来上がった塩は、とげとげしさのない、まろやかな塩味に仕上がる。

 バンさんによると、この塩を使って魚を漬け込むと、ヌクマム(魚醤)の香りがさらに良くなり、水分が出ることなく1年間は保存できるという。

 バンさんはおよそ3日ごとに7~8kgの塩を収穫している。現在、バンさんはこの伝統的な製法を守りながら、塩作りを続けているガーさんとクエさんの2人にも指導している。また、バンさんはゴーコー古塩田保存グループの代表も務めている。

 この保存グループの取り決めにより、生産された塩はすべてゴーコー村コミュニティ観光協同組合に販売され、入場券を購入した観光客へのお土産として配られる。買い取り価格は1kgあたり10万VND(約620円)で、一般的な塩のおよそ100倍の値段だ。

 「この仕組みのおかげで、住民が価格競争をすることなく、観光収入を増やすことができるうえ、伝統的な塩の偽装を防ぐことにもつながっています」と協同組合の代表者は語る。

2000年の伝統を世界へ

 バンさんが塩作りを行っている岩場は、サーフイン文化(サーフィン文化:紀元前500年もしくは300年頃から紀元後100年頃にかけてベトナム中部を中心に分布した鉄器時代の文化)の痕跡を数多く残す、広さ約105haのゴーコー村の中にある。塩田から村の道、垣根、井戸に至るまで、至る所に岩が見られる。

 2025年、クアンガイ省博物館のドアン・ゴック・コイ副館長は、バンさんが塩田について歌った民謡「バイチョイ(Bai choi)」を偶然耳にした。コイさんはすぐに60km以上離れた場所からバンさんに会いに行き、バンさんの先祖が塩作りをしていた場所へ案内してもらった。「それは、私が長年探し求めていた先史時代の製塩技術の答えでした」とコイさんは語る。

 この発見を受け、コイさんはバンさんと他の2世帯に対し、岩の上で行う塩作りを復活させるよう説得した。バンさんが指し示した塩田のある地域を調査した結果、その面積は約10haに及び、約2000年前のサーフイン文化の時代から存在することが確認された。

 「ここの製塩技術はとてもユニークで、現在、世界でも中国の海南島にしか似たような製法はありません」とコイさんは話す。コイさんによると、クアンガイ省のリーソン島や日本の沖縄でもサンゴ礁を利用した塩作りが行われているが、一度だけ海水をまき、天日にさらして結晶化させるという点で、サーフインの塩田で使われる技術とは異なるという。

 この発見は、多くの専門家や観光客をゴーコー村に引き付けるきっかけになった。クアンガイ省農業環境局のグエン・ドゥック・ビン副局長は、海外の専門家や観光客からの関心が寄せられていることは、地域にとって前向きな兆候だと評価している。

 ゴーコー村コミュニティ観光協同組合によると、目標は生産を拡大することではなく、塩田を観光資源に変えることだという。塩は量り売りされるのではなく、観光客へのお土産として無料で提供される。その価値は、観光体験や伝統的な生業を守り続ける物語、そして古代サーフインの人々の居住空間そのものにある。

 こうした中、クアンガイ省文化スポーツ観光局は、特別国家級遺跡に指定されているサーフイン文化遺跡の範囲にゴーコー古塩田を追加するよう提案している。 

[VnExpress 00:00 29/06/2026, A]
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