[特集]
世界のベトナム人街を訪ねて【ベルリン編・後編】
2025/07/13 10:30 JST更新
) (C) T.Sasaki |
small>(※本記事はVIETJOベトナムニュースのオリジナル記事です。)
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ドンスアン・センターの店舗はベトナム系だけかと思っていたが、インドや中東系もざっと見たところ全体の4割から半分程度と結構な割合を占めている。彼の地の人たちが好むファッションや食品を取り扱っており、一つの建物でベトナムとインド~中東という不思議なすみわけがなされていた。いずれにしても、ドンスアン・センターに入場する際、中東系の人たちが多かった理由が理解できた。
屋内市場。建物の中央を貫くように1本の廊下が通る
色とりどりのファッション雑貨を扱う店
繁盛していたスマートフォンショップ
屋内市場入り口付近に、イベントや店舗などの掲示物が貼り出されている ドイツ人に意外と人気だったのが理髪店だ。店ごとに料金設定は異なるが、カットだけであれば大部分が男性は10ユーロ(約1700円)、女性は15ユーロ(約2500円)。現地では安いほうなのかもしれない。あるいはベトナム人理容師の腕が良いということも、人気の理由として考えられる。
ドンスアン・センターに多い理髪・美容の店
理髪店は、他に比べ呼び込みが盛んだ。店先に出された価格表を眺めているだけでもスタッフが出てきて「ハロー!」などと声をかけ、手招きしてくる。試しに髪を切ってみようと店に入ったが、散髪担当の女性がドイツ語とベトナム語のみに対応しており、希望の髪型を詳細に伝えられなかったため諦めてしまった。写真を見ながら指差しで注文できるという点では、ネイルサロンのほうが外国人には入りやすいのかもしれない。
ベトナム人やインド~中東系の在住者に人気があるのは食料品店だ。ドイツに住んではいても、やはりルーツとなる国の味が恋しくなるもの。週末に食料品をまとめ買いしようと、多くの来店客が行き来していた。
ベトナム系の店では、ヌックマムなどの調味料からライスペーパー、乾麺、パクチーなど基本の食材は一通りそろえている。現地のベトナム系事業者が作っているのか、ベトナムハム(チャールア=Cha lua)やベトナムさつま揚げ(チャーカー=Cha ca)、餅類もあった。
繁盛する店内には、入荷した商品を入れたダンボール箱が次々運び込まれている。すかさず店員たちが声を掛け合い、品薄になった商品の補充作業。レジ前には列ができており、一つの会計を終えるたびに「次の方~!」と店員の声が上がる。週末の食料品店の中はとても忙しく、活気でいっぱいに満たされていた。
食料品店内部。ライスペーパーや麺類が豊富
レジ横で餅類や加工食品を販売
次ページ→雑貨店の若者との一幕雑貨店の若者との一幕
衣料品店や理髪店に交じって、他とは趣向がやや異なる雑貨店が1軒あったので入ってみた。籐のかごやトレー、陶製の茶器などが取りそろえられ、まるでベトナムの土産店にいるような感覚。床のタイルや商品のもセンス良く、温かみある照明で、陳列も分かりやすい。
ギフトショップのような雑貨店
店番をしていた若いベトナム人スタッフはベトナム語とドイツ語にのみ対応するようで、英語はあまり分からない様子だった。ベトナム人顧客に応対する一場面もあったが、ドイツ語が一番話しやすそうだ。それでも顧客からの質問には、懸命に答えようとしてくれる。一方的に売り込まない節度ある接客も含め、感じが良い店だった。
同店で小さな陶器の皿と、ミニサイズのベトナムの茶葉を購入。その際、スタッフがドイツ語で何かをしきりに伝えようとしていた。「毎度あり!」というより、ちょっとこちらの顔色をうかがうような雰囲気だ。その心を推し量ろうとするがやはりよく分からず、申し訳なかったが挨拶をして店を出た。
雑貨店で購入した陶器とミニお茶パック
それでも、若いスタッフが何を言おうとしていたのかやはり後々まで気になった。彼が口にした中で印象に残った単語をインターネットで調べ、懸命に推測してみたところ、おそらく茶葉が2つで3ユーロ(約510円)のところ、4つで5ユーロ(約850円)にするということだったかもしれないと気付いた。
ベトナムの市場で果物などを買う際、売り子に「本当は2個で5万VND(約270円)だけど、5個10万VND(約550円)でいいよ」などと言われ、つい予定より多く買い込んでしまうことがある。ベルリンの真っただ中で、ドイツ語を駆使する彼にこの商法で売り込みされるとは思ってもみなかった。とはいえ時すでに遅し。またドンスアン・センターに来た際、ぜひともこの店から茶葉2つ以上を買っていきたい。
ドイツでは、ベトナム系の店や人々が他国の店、物と共存していた。それでもベトナムというアイデンティティを失うことは決してなく、現地なりの根付き方をしている様子が印象的だった。ベトナム一色のチェコとはまた違った様相。同じ欧州の隣り合う国ですらも、地域によりまったく別の表情が見られる点が、ベトナム人街巡りの楽しさだと改めて感じさせられたドイツの旅だった。
【Text & Photo by T.Sasaki】
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