コロナで逝った女友達との約束、「父ふたり子ひとり」の子育て

2022/07/24 08:21 ICT配信

 それを聞いたリンさんは、もしそうなれば愛するパートナーと永遠に別れなければならないとわかっていたため、うろたえた。リンさんは、自分はバックさんだけを愛していて、他の人と結婚しても幸せにはなれないのにと、少しの恐怖が頭をよぎった。

イメージ写真
イメージ写真

 母親は、子供は産む、でもリンさんとバックさんに育ててほしい、と言った。

 その後、リンさんは子供の母親である女性と一緒に暮らすことはなかったが、彼女を定期健診に連れて行くなど、子供の父親としての責任を果たしていた。

 そして2021年8月に生まれたコップくんを最初に抱いたのはバックさんだった。バックさんは、出生証明書のためにコップくんとリンさんのDNA検査の手続きの準備もした。コップくんを人生で最初の予防接種に連れて行ったのもバックさんだった。

 こうしてリンさんとバックさんはコップくんの親として子育てに奮闘することになる。呼び方も、リンさんは「大きいパパ」、バックさんは「小さいパパ」に変えることにした。

 母乳で育てて2週間が経ってから、リンさんとバックさんはコップくんをホーチミン市の自宅に連れて帰り、リンさんの両親と一緒に育て始めた。その間に母親も退院し、ホーチミン市に戻った。ちょうど、新型コロナの影響で社会的隔離措置が講じられている時期だった。

 それから1週間後、リンさんはコップくんの母親から新型コロナに感染して重症患者向けの仮設病院に入院することになったというメッセージを受け取った。「彼女は出産したばかりで身体も弱っていて、そばに世話をしてくれる人もおらず、基礎疾患も持っていたんです」とリンさんは涙ながらに語る。

 彼女は自分の将来がもう長くないことを予期してか、病院でA4用紙2枚にわたる手紙を書き綴った。「バックさんには、リンさんへの想いと同じように息子を愛し、世話をしてあげてほしいです。リンさんと一緒にあの子を育ててください」。手紙には、バックさんへの感謝の気持ち、自分の代わりにバックさんに「母親」として子供を育ててほしいこと、そして3人で幸せに暮らしてほしいこと……、彼女の心の底からの想いが綴られていた。

 この手紙が2人の元に届くということは、彼女が亡くなったことを意味する。2021年9月のある雨の午後、病院からリンさんにこの手紙が手渡された。

 彼女はこの手紙をバックさんに託し、いつかコップくんが大きくなったら彼に手渡してほしいと望んでいた。そして、自分の代わりの「母親」の役割は、他の誰でもなくバックさんに任せ、バックさんとリンさんの2人で一緒に人生を過ごしてほしいと願っていた。

前へ   1   2   3   4   次へ
© Viet-jo.com 2002-2026 All Rights Reserved 利用規約 免責事項

この記事の関連ニュース

 国連女性機関(UN Women)とトランスジェンダーの権利擁護団体「It’s T Time」はハノイ市で24日、「トラ...

新着ニュース一覧

 ベトナム最大規模の質屋チェーンF88投資[F88](F88 Investment)は10日、ハ
 電子機器受託生産(EMS)で世界最大手の台湾フォックスコン・テクノロジー・グループ(Foxconn Technology...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ホーチミン市都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~スオイティエン区間)を運行する同市メトロ1号線有限会...
 南部メコンデルタ地方ドンタップ省タンタイン村(xã Tân Thạnh、旧タインビン郡)のファ...
 ベトナムで年間売上が1兆VND(約61億円)以上の大学が16校に達した。財務面での自主運営を進める公立校や...
 東映株式会社(東京都中央区)は、韓国の総合エンターテインメント企業でシネマコンプレックス「ロッテシ...
 ベトナムは、米国が主導する「AI機会パートナーシップ(AI Opportunity Partnership)」に関する共同声明...
 商工省傘下の国家競争委員会(Vietnam Competition Commission=VCC)は、◇FPTプレイ(FPT Play)、◇TV360...
 ベトナム国家鉄道グループ(Vietnam National Railway Group=VNR)傘下の「鉄道運輸(Railway Transport)...
 日本貿易振興機構(ジェトロ)ホーチミン事務所、在ベトナム日本国大使館、ホーチミン日本商工会議所(JCC...
 チャン・タイン・マン国会議長は12日、中国・北京の人民大会堂で、中国全国人民代表大会(全人代)の趙楽...
 内務省の発表によると、2027年のベトナムにおける公的機関・組織の祝日に伴う休暇日数は、前後の週末を...
 ホーチミン市警察は10日、環境モニタリングや分析の結果を改ざんしたほか、不法なインボイス売買を行っ...
 ベトナムで音楽ライブやコンサートの鑑賞を目的とした「コンサートツーリズム」の需要が急増している。...
トップページに戻る