つい昨年、タイのバンコクで35歳の日本人駐在妻が2人の小さな娘たちを残してコンドミニアムの20階から転落死するという痛ましいニュースがあった。駐在妻は友人に、2人の幼い子どもの子育てや仕事に追われる夫について不満を漏らしていたことが分かっているため、ほぼ確実にストレスが原因での自殺だったと見られている。
この駐在妻の例は、一番最悪な結果であるが、同様に海外生活でストレスや孤独と闘う女性や夫である駐在員にとっても、決して他人事であると片付けてほしくない。メンタル不調になってしまったのなら、日本に帰国させれば良いという単純な問題でもない。妻がメンタル不調になることで、本人が苦しい思いをすることは勿論、夫である駐在員も仕事に集中できなくなり、パフォーマンスが落ち、駐在先での幸福度も著しく下がる。
1.海外駐在員の増加
外務省が発表している海外在留邦人人数調査統計によると、平成29年(2017年)10月1日現在、海外在住邦人の総数は135万人を超え、調査が開始された過去50年間で最多となった。
一方、海外に進出した日系企業の総数についても、71,820社に及び、こちらも過去10年間、毎年増加している。(平成24年を除く)特に最近際立って増加が目立つのが、インドや東南アジアのタイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、マレーシアなどだ。
一昔前は、海外赴任というと一部の企業と選り抜きの社員だけのものというイメージがあったが、現在では会社規模の大小、地方、業種を問わず海外進出をする企業が増えたことで、自ずと海外駐在社員数も伸びていった。社員に家庭がある場合に、家族を赴任先に帯同させることも珍しくはない。
そうなった際、駐在員の家族は、ある日を境に、まったく馴染みのなかった外国に移り住むことになる。こういった環境の変化により生じるストレスは、駐在員だけでなく一緒に付いてきた駐在員の配偶者(圧倒的に妻の場合が多い)や子女にも重くのしかかることがある。
特に駐在員の妻が経験しそうなストレスは、容易にあげられる。
2.海外赴任の夫に帯同することで妻が感じるストレス10選
1. 何かにつけ日本と同程度の質のサービスを期待できないストレス
2. 日本とは勝手が違う生活スタイル、入手しにくい物が増えるストレス
3. 新しい文化・環境の中で人間関係を構築しなおすストレス
4. 3の過程が充実せず、心から信頼できる友人がいないストレス
5. 以前より人付き合いやコミュニティに縛られやすくなったことで生じるストレス
6. 娯楽の減少によるストレス
7. 海外での妊娠・出産が可能なのか、受けられる支援への不安
8. 育児や子どもの教育に関する知識不足・強いプレッシャー
9. 夫の生活・仕事環境が変わることで生じる夫婦関係変化のストレス
10. 社会的存在意義や”やりがい”を感じられない、キャリアの断絶などによるストレス
海外移住という大きなライフイベントが駐在員の配偶者にもたらすストレスは大きい。
日本人は他の人種よりも行動や思考様式の独自性が特に強く、その特性が異文化での日本人の不適応や適応困難を引き起こしているのではないかという議論があるそうだ。それは日本という国の自文化中心主義、集団主義/集団への依存、ウチとソトの集団の区別等、異文化適応への弊害となりそうな特徴を複数有しているからだと考えられている。(※1)
※1「今、備えておくべき!海外赴任社員のメンタルヘルス対策(著:淵上 美恵 出版:第一法規)」
3.海外駐在員とその家族はサポートを必要としている
本来なら、そういった特性を理解して「では、できるだけの支援を」となるべきところ「適応できない者が悪い」「自分のことは自分で何とかしろ」という自己責任論に終始しがちなのも日本の特徴かもしれない。こと、社員ではなく社員の妻である場合は余計にそうなるのではないか。
海外駐在員を多く派遣したり、手厚い支援を行える程の余裕がある企業ならば、話しは変わってくるかもしれない。ある大企業は、その一例であり、派遣させる海外駐在員も多いため、帯同する妻も多いそうだ。当も比較的手厚く、朝食の出る高級サービスアパートメントに社員とその家族を住まわせ、会社で契約しているレンタカーをファミリーカーとして配車してくれるのだという。◯◯社婦人会のように、お互い同じ会社に務める夫を持つ妻のコミュニティがあり、来て間もない駐妻(駐在員の妻の略称)に対しては、先輩駐妻が食品や日用品の買い出し場所といった情報を共有してあげたり、実際に買い出しに同行したりといったサポートを行っているそうだ。
しかし、当たり前だが上述したような企業ばかりではない。派遣している駐在員が少なく、帯同家族コミュニティがない、もしくはそもそも手厚いサポートを行う余裕のない中小企業はどうだろうか。
勿論、誠実な努力を行っている企業もあるだろうし、駐妻本人の性格や考え方にもそれぞれ違いがあるため一概には言い切れないが、やはりストレスにうまく対処できずにメンタル不調に陥ってしまう可能性が高まると言える。
4.駐在ライフは、駐在員だけでなく家族、特に妻のメンタル不調リスクを軽減
シーサー株式会社がベトナムをメインに、主にアジアで展開しているメンタルヘルスケアサービス「駐在ライフ」では、「海外駐在員のメンタル不調を未然に防ぐ」をコンセプトに、海外駐在員向けに、専用のストレスチェック、臨床心理士による定期的なカウンセリング面談を提供している。
同サービスでは、駐在員だけでなく、その妻もカウンセリング面談の対象となる「家族プラン」を用意しているため、社員とその家族のクオリティ・オブ・ライフの向上の一助となるだろう。
詳細については下記に問い合せ先を参照。
また、駐在ライフ運営事務局では直近の11月中旬に、ホーチミン在住の駐在妻向けに、自身の強みやキャリアを再発見し、帰国までの毎日を幸せに過ごすためのイベントを計画中だ。イベントは株式会社Waris(ワリス)との共同開催になる予定。Warisは、どんなに環境が変わっても自分の能力を生かしてイキイキと働き続けられる社会の実現を目指す、女性中心の注目企業である。
詳細については下記問い合わせ先(ベトナムから)を参照してほしい。
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