ホビロンの食べ方~見た目はアレでも超おいしい~

2015/05/25 JST配信

ベトナムの「ゲテモノ料理」の代表格として扱われている「ホビロン(アヒルの卵の孵りかけ)」。殻の中には羽やら血管やら形のできかけた生き物が入っているので、確かに見た目はグロテスクです。でも意を決して食べてみると、普通のゆで卵を濃厚にしたような風味で、実はとても美味しい食品。今回は、ホビロンの買い方や食べ方をご紹介します。

(C) VIETJO Life 孵化直前のアヒルの卵(左)とウズラの卵(右)

ホビロンとは?

「ホビロン」とは、ベトナムなど東南アジア各国でよく食べられている、孵化直前のアヒルの卵を茹でたもの。南部では「 hột vịt lộn (ホッヴィッロン)」、北部では「 trứng vịt lộn (チュンヴィッロン)」と呼びます。「Hột」は「粒(転じて卵)」、「trứng」は「卵」、「vịt」は「アヒル」、「lộn」は「異なる、変化する」を意味します。

フィリピンでは「バロット / バロッ」、カンボジアでは「ポンティアコーン」、中国では「毛蛋(マオタン) / 死胎蛋(スータイタン) / 鴨仔蛋(アープザイダーン)」などと呼ばれるそうです。

ホビロンは滋養強壮に良いのだそうで、ベトナムでは小腹がすいたときのおやつやビールのつまみとして、妊婦の栄養補給として、大人から子どもまでよく食べます。

ベトナムでは、ニワトリの卵の殻は茶色いのが普通で、殻が白くて鶏卵よりひとまわり大きなものはアヒルの卵です。

ホビロンを買ってみよう

(C) VIETJO Life ホビロンの路上屋台

ホビロンは、「hột vịt lộn」または「trứng vịt lộn」、「vịt lộn」という看板を掲げている路上屋台、バイクや自転車の移動式屋台などで売られています。路上の飲み屋や 貝屋 などのメニューにもあります。

茹でただけのホビロン「 hột / trứng vịt lộn luộc (ホッヴィッロンルオック)」が最もスタンダードですが、他にも タマリンド ソースで炒めたもの( hột / trứng vịt lộn xào me :xào=炒める、me=タマリンド)やバターで揚げ焼きしたもの( hột / trứng vịt lộn chiên bơ :chiên=揚げ焼きする、bơ=バター)もあります。茹でたものは1個5000~6000VND(約28~33円)くらい。飲み屋や貝屋のメニューだと、もう少し高くなります。

ホビロンを買うときには、「trứng(卵、卵の数詞)」を使います。

・1個ください。

 Anh / Chị lấy cho em một trứng nhé.

 アイン / チ レイ チョー エム モッ チュン ニェー

 anh / chị=同世代~少し年上の男性(女性)に対する人称

 lấy=取る、買う

 em=相手が同世代~少し年上の場合の一人称

ホビロンは、発生の状態によって中身の見た目や味が大きく変わってきます。フィリピンなどでは、「形ができつつある状態」、「形が作られた状態」、「殻から出てくる直前の状態」によって細かく呼び分けているようです。発生が進むにつれて見た目もリアルな雛に近付いていくので、初心者の方にはまだ発生が進んでいない状態のものをおすすめします。発生の状態を選んで買いたい場合は、次のように言ってみましょう。

・ちょうど良い状態 / まだ発生が進んでいない状態 / 発生が進んだ状態のものをください。

 Anh / Chị lựa giùm cho em con vừa / nhỏ / to (lớn) nhé.

 アイン / チ ルア ズム チョー エム コン ヴア/ニョー/トー(ロン) ニェー

 lựa=選ぶ

 giùm=助ける(動詞の後に付けて「~してください」)

 cho em=私に

 con=生き物の数詞、匹

 vừa=ちょうど良い

 nhỏ=小さい

 to (lớn)=大きい

ホビロンを買うと、タデ(蓼)の仲間の葉っぱ「rau răm(ザウザム/ラウラム)」も一緒に出てきます。「蓼食う虫も好き好き」のタデです。苦味と辛味が強く少し癖がありますが、解毒作用があるそうで、ホビロンや貝、シーフードなどあたりやすいものと一緒に食べると良いと言われています。

ホビロンを食べてみよう

まず、タマゴの尖った方を下に、平たい方(底の方)を上にします。中身は尖った方に偏っているので、空洞のある平たい方を割るときれいに食べられます。路上のお店などでは、エッグスタンドに立てて出してくれます。

(C) VIETJO Life Hột vịt lộn

平たい方の上部を、スプーンの背でコツコツ叩いてヒビを入れます。ヒビが入ったら、上部の殻を剥きます。中は汁がたっぷりなので、剥き過ぎて汁がこぼれないように気をつけましょう。殻を剝いたら、中の汁をすすります。この汁が濃厚なチキンスープといった感じでまたおいしいです。

(C) VIETJO Life  Hột vịt lộn

中身は発生の状態によって異なりますが、発生が進むと部位もわかれていて、羽もあって、血管もあって、孵化直前だと目やくちばしもあって、初めて見るとびっくりするかもしれません。ですが、じっくり見ずに「ゆで卵」と思えば大丈夫。特に発生が進んでいない状態であれば、形はほとんどわかりません。姿を見る前にスプーンでぐちゃぐちゃにかき混ぜてしてしまうというのも手です。

(C) VIETJO Life  Hột vịt lộn

塩コショウにライムを絞ったもの(muối tiêu chanh=ムオイティエウチャイン)にお好みで唐辛子(ớt=オット)を加えて、これをつけながら、スプーンですくって食べます。ホビロンの味は、鶏のゆで卵の黄身に近いですが、濃厚です。孵化直前のものだと、鶏肉に近い味もします。

(C) VIETJO Life  Muối tiêu chanh

中身を見る自信がない人は、夜外で食べると、中身を見なくてすみますよ。

ところ変われば食べ方も変わる、ハノイ在住者の情報によると、ハノイの人たちは殻の上を少し割って食べるのではなく、豪快に割って茶碗に中身を出し、くちゃくちゃにして食べるそうです・・・。また、ライムを搾った塩コショウのほか、刻んだしょうがを一緒に食べるそう。しかも、朝ごはんとして食べることが多いそうです・・・。

初心者にはウズラがおすすめ

ベトナムでは、アヒルの卵だけでなく、孵化直前のウズラの卵も同じように食べます。こちらは「 trứng cút lộn (チュンクッロン)」と呼ばれます。味と見た目はホビロンと同じですが、一口サイズで食べやすく、見た目もあまり気になりません。初心者の方やホビロンはちょっと・・・という方は、チュンクッロンの方をおすすめします。

(C) VIETJO Life  Trứng cút lộn

チュンクッロンもホビロンと同じく、卵の尖った方を下に、平たい方を上にして、上部の殻を剥いて食べます。こちらは卵の殻がやわらかいので、スプーンを使わなくても指で押すだけでヒビが入ります。

(C) VIETJO Life  Trứng cút lộn

チュンクッロンは、10個1万VND(約56円)くらい。10個単位(chục=チュック、10)で売られています。看板には「10.000 / chục」などと書かれており、これは「10個1万VND」という意味になります。

見た目は・・・ですが、実は美味しいホビロン。よくよく路上を見ていると、あちらこちらで売られています。「ホビロン食べた」と言うと、ベトナム人にもびっくりされるかも。おやつにおつまみに、ぜひチャレンジしてみてくださいね。