読者からの投書により、ホーチミン市ビンタン区にある西部バスターミナルを根城にして、地方から長距離バスで到着したばかりの若者を狙って身ぐるみをはぎとる悪質なグループのいることが分かった。まず親切なバイクタクシーを装った男たちが被害者を取り囲んで、給料の高い仕事を紹介してやるなどとだましてバイクに乗せ、人気(ひとけ)のないところで財産を奪い、最後にあらかじめ話のつけてある場所に売り飛ばすという手口。
メコンデルタ地方アンザン省から兄を頼って仕事を探しにホーチミン市に出てきたKさん(18歳)は、10月30日午後、ターミナルに到着するとすぐバイクタクシーたちに取り囲まれた。兄の所に行きたいと言うと、運転手の一人はKさんを乗せて20分ほど走ってある家に行き、その家から出てきた女から現金を受け取って去った。女は別の男にKさんを運ぶように指示、男はバイクで1時間ほどの場所にある家にKさんを閉じ込めた。運び役の男は家の主から現金を受け取っていたという。
この家の中には同じ境遇の若者5人がおり、ごみの分別作業をさせられていた。家主は「きのう逃げた奴がいるが、きっと捕まえて殺してやる」とKさんに脅すように言った。Kさんは翌31日の深夜に脱走、かなりの距離を走ってから明かりの見える民家に飛び込み救助を求めて救出された。Kさんは幸運なケースで、何か月もただ働きさせられる場合が多いという。
記者らが西部バスターミナルに張り込んで調査した結果、Kさんと同じ様にしてバイクタクシーでどこかに連れ去られるケースが多いことが分かった。また、ごみ分別の家にKさんを送るよう指示した女があるカフェの経営者で、その背後にTrという男が率いる人身売買組織のあることも突き止めた。同ターミナルにはこの男以外のグループも存在するほか、他のバスターミナルでも同様の事件が起きている。