2月27日と28日にハノイ市で行われた米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談や、その直後の3月1日と2日に行われた金委員長のベトナム公式訪問はまだ記憶に新しい。
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厳戒態勢が敷かれたハノイ市の様子は連日メディアで報道され、国内外から注目されていた。そのなかで、脚光を浴びたのが長身に端正な顔立ちをしたベトナム人民軍の儀仗兵(ぎじょうへい)たちだ。儀仗兵は国家元首や高官の警護や各種儀礼に配置される特殊部隊で、厳しい審査に合格した新兵のみが儀仗兵の任に就くことができる。
儀仗兵の基準は、◇政治的な素養がある、◇健康状態が良好、◇軍人としての基本的な振る舞いができる、◇任務を完璧に遂行する能力がある、◇容姿端麗、◇身長180cm以上であることとされており、合格者は年に100人ほどだ。
地方の省から入隊年齢に達した男子で儀仗兵への推薦があると、儀仗部隊の幹部が省へ赴き審査を行うが、身長を満たしていない場合は審査が進んでいても中止となる。儀仗兵の任務は守秘性が極めて高く、立ち位置も国家元首と近いため、志願者の経歴も厳正に審査される。
儀仗兵は儀礼や式典などに登場することが多く華やかな職務だと思われることが多いが、その裏には厳しい訓練があることはあまり知られていない。
長時間同じ姿勢を保つ訓練では10分、20分、60~70分と徐々に時間を延長していき、2時間の直立不動が求められる任務の訓練では3~4時間同じ姿勢をとる。このほかにも一糸乱れぬ行進や敬礼、捧げ銃などの動作の訓練も繰り返し行われる。タンロン・ハノイ建都1000年記念(2010年)やハノイ解放60周年(2014年)には式典の3~4か月前から強化訓練を実施した。
儀仗兵の任期は2年だが、一部の隊員に新任のとりまとめ役として残ることを命じるほか、毎年、軍事的能力が高く容姿端麗な者8~10人を長期任務の隊員として採用している。現在は約70人が儀仗兵の任に就いている。
2015年にはアオザイのデザイナーからの要請で20人の儀仗兵がファッションショーに出演した。ミス・アオザイと一緒にランウェイを歩く身長185cm以上の男性モデルを集められなかったため招集がかかったのだ。儀仗兵のなかには長身を生かして退役後にモデルに転身する者もいるという。