「日本的な感覚を捨て、前に進む勇気を」久実・リップマンさん/美容院経営

2017/05/18 08:30 JST配信

ベトナムで人材紹介を行う JellyfishHR がお届けする在住日本人へのインタビュー。

今回お話をお伺いしたのは、株式会社 CLEO hair international(クレオ ヘア インターナショナル) 代表取締役の 久実・リップマンさん

久実さんは、1981年に東京の美容室勤務を始てから、ヘアーショーや撮影などにも携わってきました。1989年には、広島の母経営のサロンに参加。その後独立。1996年よりロンドンやパリ、オーストラリアにてショーやコレクションなどに参加。そして、2017年現在、広島で3店舗、ベトナムで1店舗を経営しています。

「日本的な感覚を捨てて、前に進む勇気を」

若い頃からグローバルに仕事を行っている久実さんに、「海外、ベトナムで働く」ことについて「自分自身の変化」と「他人の変化」の2つの視点からお伺いしました!

「海外、ベトナムで働く」こと

― いろいろな国のコレクションやショーへの参加や海外への出店。「海外で働く」経験が

豊富な久実さんですが、海外に挑戦しようと思った理由は何だったのですか?

リップマン:個人としては、日本のようなコンサバティブな環境ではなく、 言語を主体としたビジネススタイルの中で挑戦したかった からです。

日本のような空気を読む文化ではなく、しっかりと言葉で伝えていかなといけない。そうやって人間関係を構築していかなければいけない。そちらの文化の方が私は好きだったので、海外の仕事にも挑戦しました。

会社の代表として海外にお店を出したのは、いろいろな意味で アウトソーシングできるのではないか 、と思ったからです。数ある国々の中でも、世界情勢の変動などもあり、ニューヨークやイギリスといった場所ではなくアジアのベトナムにしました。

― 長い間海外で働いている分、大変だったことも多くあると思います。

「ベトナムで働く」中でどのような困難がありましたか?

リップマン:皆さんもおっしゃるように 「文化の違い」 が一番ですね。特に、ベトナムの共産国という縛りと、後進国という形。

先進国は、イギリスに住んでいたりアメリカによく行ったりするのですが、後進国で長く滞在した経験はありませんでした。 先進国の常識で理解できることが後進国では理解できない 。そういった文化の違いは私も苦労しました。

また、情報収集に関しても苦労しました。ベトナムに来て5年になるのですが、5年前というのはちょうどアジアに行く最初の頃でした。ベトナム企業の情報が少なく、「どうやって起業することができるのか?」というところから調べ、自分で現地に来て自ら集めて。そういったことが大変でした。

ただ、ベトナムで実際に自分の足で情報を集めたことにより得られたことも多くあります。 情報を集める際は、現地に入り自分の肌で感じて集めることを強くおすすめします

もちろん言葉の壁もあります。ただ、ベトナムは英語ができれば多少通じるので、助かっています。

あとは、他社の会社が日本人ばかりではない、ということです。日本だと、競争相手は日本人のお店ですよね。でも、こちらでは 競争もグローバル なんです。いろいろな国の人たちとの競争なんです。ベトナム人との競争はもちろん、韓国人、中国人、イギリス人、アメリカ人、フランス人・・・。

そういう人たちがいろいろなところでいろいろな商売をしているので、そういった人たちとの競争です。海外でお店を出すのが初めてだったので、今までは広島で日本人との競争しかしてこなかった分、ホーチミンはとてもインターナショナルなので、前に進んでいく勇気がないと勝てないなっていうのと、いろいろな面で 日本的な感覚では勝てないな って思いました。今、ベトナムはフラットな状態なので誰が上に立つかを争っている状態なんですよ。

― では、そういった経験を通して得られたことはありますか?

リップマン:得られたものとは少し違うかもしれませんが、いろいろな初めての経験ができました。 外国人を雇うっていうことも初めて で、日本人と違って言葉で伝えなければ伝わらない。でも、もともとそういう性格だったので、海外の経験を通して得られたものというより、再認識できた部分ですね。

あとは、 高度経済成長を目の当たりにできている こと。日本ではもう終わってしまって、自分が見れなかった時代を今目の当たりにできている。この状況は自分にとって、とてもエネルギーがわいてきます。広島とベトナムを1ヶ月か2ヶ月に一回行き来しているのですが、広島はこれからどうなっていくのだろう、という不安の中で仕事をしているので、ベトナムでエネルギーをもらって、広島に帰って考えて。その繰り返しで、仕事に取り組んでいます。

従業員の成長を通して見る「海外、ベトナムで働く」こと

― 従業員の育成の場としてもベトナムを使っている、とお伺いしました。

リップマン:そうです。ジュニアスタイリストの子たちを来させて、3日間で朝から晩までモデルカットをさせて、経験値を上げる、ということをやっています。

ベトナム人は、日本のファッションや言葉にとても興味を持っています。そのため、「日本から来たスタイリストが髪を切ってくれる」ということでモデルはたくさん集まるんです。日本では、お店の客層なども関係し、こんなにたくさんの人たちを短期間で切る機会はありません。とてもいいトレーニングの場になっています。

― 経験値のほかに、ベトナムでトレーニングをするメリットとは何なのでしょう?

リップマン:これはベトナムに限らない話ですが、 後進国の子たちはとにかく積極的 です。そのため、接客の際は日本でやるよりももっと自分がリーダーシップをとったり、もっとカウンセリングをしたりすることが必要になってきます。

「日本人美容師は、日本で勝つためにもっと海外との交流をすることが活性化のポイントになる」 とある雑誌に書いてありました。まさに私もそう思っています。

私たちの職業 「美容師」 は、お客さまの思いを聞き、理解し、形にしていく仕事です。にも関わらず、経験値の低い現代の若者スタイリストは、キャパシティが狭く前に出れないスタッフが多くなってきている現状があります。

経験値を上げさせて魅力のある人間に育てる 。そういったことがスタイリストとしての成功にもつながると共に、企業として取り組むべきことだと考えています。

ある調査で 「世界一チャレンジしない日本人」 ということが書かれていました。私はサロンを経営し始めて約25年間、常にスタッフには海外経験をさせるシステムを組んできています。今はまさにベトナムです。

また、日本は少子高齢化で人口も減少し始めています。美容室も昔の時代のようにお客様がたくさん来ていただける時代ではなく、お一人のお客様と一生お付き合いできるサロン経営をみんなが目指しています。だからこそ、ベトナム人は平均年齢28~29歳と言われており、練習モデルも豊富ですし、日本人より積極的です。研修にきたスタイリスト達には両面からとても刺激になっているようです。

「どんな髪にしますか?」

「あなたにお任せします。」

そういったことも多いです。ベトナムでは、日本とは違い、お客様の方からどんどんコミュニケーションをとってくださいます。そのため、コンサバティブな要素を持っている子がトレーニングに来ると、「やっぱりベトナムはいいですね。」と言って一皮むけて帰って行く。そこが一番いいところだと思っています。

ベトナムで働くことの意味とは?

― では、最後に読んでる方に向けてメッセージをお願いします!

リップマン:私は、日本に絶対いなくちゃいけないことがない限り、今からは アジアに出た方がいい と思います。出て損はないです。

最近、特に日系企業の進出が多く、日本人の人口も増えてきています。その状況で働くことは、責任も大きいかもしれませんが、勉強できることも多いのではないでしょうか?

今、日本でも求められていることの一つが 「働き方のダイバーシティ―(多様性)」 だと感じています。目まぐるしく世界も変わりつつあるなかで、日本という小さな国の中からしか見れていない世界。その中でサクセスストーリーが作れるか?ということを考えると、経済成長の目覚ましいベトナムで勤務して経験できることは、チャンスとしか言えないと思います!

他にも、英語をしゃべる機会が多い、積極的な人たちとの出会いが多い、グローバル環境に身を置くことの素晴らしさは、実際に来て経験してみないと本当の良さがわからないでしょう。かえって、国外に出たことで日本はとてもいい国で、いい文化や技術があることにも気付けると思います。今のアジアで働くことはいろいろな面でいい経験になるのではないでしょうか。

― 素敵なお話し、ありがとうございました!

― インタビュー後述

日本の足りないところと、アジアの可能性。いろいろな国を経験している久実さんだからこそのお話しをお伺いできました。ここ数年の変化と同様、ここから数年で大きく変わってきます。それはベトナムも日本も同じです。

これからの自分に必要な経験や知識。そういったものを今一度考え直し、それらを身に付けるためにはどういった場が適しているのか。ぜひこの考えを視野に入れてみてください!

久実さんのお店の詳細はこちらから! >> クレオ ヘア インターナショナル

著者紹介
JellyfishHR Co.,Ltd
2013年8月から日系人材紹介会社としてベトナムに進出。現在「ハノイ」「ハイフォン」「ホーチミン」の3拠点にて、日系、非日系問わず人材紹介サービスを提供しており、常に100件を超える日本人向けのベトナム勤務の求人・仕事を保有している。
◆ホームページURL : https://jellyfishhr.jp
ベトナム求人・転職・就職をお考えの方はこちら
Voice ~ベトナム最前線で働く人の声~
その他の記事はこちら>
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved 免責事項

新着ニュース一覧

 ベトナム最大の企業管理職向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を運営するアンファベ(Anph...
 南部メコンデルタ地方カマウ省人民委員会は19日、ダムゾイ郡でダムゾイ・カイヌオック・チャーラー(Dam...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ホーチミン市人民委員会は21日、12月の商業運転開始を予定している都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~...
 午後3時、ハノイ市ハイバーチュン区ファムディンホー街区在住のグエン・ゴック・クアンさん(男性・61歳...
 21日から23日までの日程でマレーシアを公式訪問中のトー・ラム書記長は21日、最高儀礼に則り盛大に執り...
 ドミニカ共和国を公式訪問中のファム・ミン・チン首相は現地時間20日、ルイス・ロドルフォ・アビナデル...
 米不動産サービス大手クッシュマン&ウェイクフィールド(Cushman & Wakefield=C&W)がこのほど発表した...
 南中部高原地方総合病院は19日、自宅で調理したヒキガエルの肉と卵を食べた児童2人が中毒を起こしたと...
 ベトナム国家大学ホーチミン市校(ホーチミン市国家大学=VNU-HCM)傘下の政策開発研究所が先般発表した...
 医療機関向けパッケージソフトウェアの製造・販売を手掛ける株式会社エクセル・クリエイツ(大阪府大阪...
 ハノイ市ナムトゥーリエム区の国立展示建設センター(1 Do Duc Duc, quan Nam Tu Liem, TP. Ha Noi)で、...
 米空軍は南中部沿岸地方ビントゥアン省ファンティエット空港で20日、ベトナム空軍に米国製の練習機「T-...
 ブイ・タイン・ソン副首相は19日、北中部地方タインホア省で計画されているWHAスマートテクノロジー工...
 地場系コングロマリット(複合企業)ビングループ[VIC](Vingroup)傘下の電
トップページに戻る