【第11回】新生児アビーの海外医療搬送

2018/08/29 09:30 JST配信

アビーは2017年5月8日に、双子の兄と共にベトナムで誕生しました。30週目での早産で出生時の体重はわずか1240gの未熟児でした。

アビーは、生まれた瞬間から生死をさまよう状態でした。生後初日、彼女の肺機能が低下し、十分な酸素を取り入れるために、酸素吸入器を接続。また、生後数週間には、胸部血管の手術も受けました。

生後4週目では、腸のほぼ全体が壊死状態となり、危篤状態に。摘出手術にて85%の腸を失ったアビーは、成長するために必要な母乳を消化することができなくなり、点滴のみによる栄養補給でなんとか生き延びていました。アビーの両親は、この特別な点滴剤を海外から輸入し、アビーの命を繋ぎとめていました。

3ヶ月に及ぶ新生児集中治療室での治療で、アビーは4つもの致命的な感染症と戦いました。そのうち1つは心臓の機能を瞬間的に停止させてしまうもの、もう1つは、肝機能障害をもたらし、容態をさらに悪化させました。しかしながら、集中治療室の医療チームの懸命な働きで、命を取りとめました。

ハン・フック病院 でのすばらしい治療にもかかわらず、アビーの状態は悪化するばかりでした。担当医は、「できることはすべてしてきたが、残念ながらもうこれ以上してあげることはない」と判断を下しました。しかし、アビーの両親は諦めませんでした。彼らは、アメリカで治療を続ける決意をしたのです。もう1度、アビーに生きるチャンスを与えたかったのです。

前例のない医療搬送に挑んだのが、危篤状態の新生児緊急医療搬送に関する長年の経験を持つ、ファミリーメディカルプラクティスの小児科チーフ・ドクターであるジョナサン・ハレヴィ医師をはじめ、マーク・ジャヴィアー看護師を含む医療チームです。

ついに8月31日、様々な困難を乗り越え、アビーは父親と医療チームに付き添われ、ホーチミンからロサンゼルスのカルフォルニア小児病院まで、30時間にも及ぶ搬送に出発。アビーを換気装置を取り付けた保育器に入れ、治療薬・栄養補給剤を点滴し、常に容態を確認しながら搬送をしました。

無事にアビーはロサンゼルスの小児病院まで搬送され、その後すばらしい回復を遂げました。今では、自力で呼吸し、母乳を飲む量も徐々に増えています。また、生まれて初めて自分の家に帰宅することができたのです。

この先、安定するまではまだ長い困難な道のりですが、アビーは奇跡を起こしているのです。

アビーについて、さらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

https://www.facebook.com/abbynec/

<著者紹介> ジョナサン・ハレヴィ医師 ファミリーメディカルプラクティス・ホーチミン市 小児科 小児科医として17年の経験をもつ。2005年から7年間にわたりファミリーメディカルプラクティス・ホーチミン市クリニックに勤務。その後、オーストラリアの小児科医療の最高峰、ロイヤル小児科病院(メルボルン市)小児科集中治療室に勤務し、小児科集中治療分野の経験を積み、再びファミリーメディカルプラクティスに帰任。1児の父。ベトナム語の育児本も執筆している。 ジョナサン医師の詳しい経歴は こちら

著者紹介
ファミリーメディカルプラクティス
20年以上の実績を持つ、インターナショナル・クリニック。ホーチミン市、ハノイ、ダナンの3都市に、5つのクリニックを開設。

日本人医師、日本人スタッフも常駐。日本語ホットラインは救急時24時間対応。

救急医療・搬送サービスも提供。救急医療 専用番号 *9999
気になる医療の話@ベトナム
その他の記事はこちら>
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved 免責事項

新着ニュース一覧

 カンボジア公式訪問を開始したチャン・タイン・マン国会議長は21日、カンボジアの首都プノンペンで、同...
 ベトナム共産党政治局・書記局は20日に開かれた会合で、政治局員・国会共産党連合会書記・国会議長在任...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ワインの輸入販売などを手掛けるエノテカ株式会社(東京都港区)は11月25日、ホーチミン市1区のホーチミ...
 午後3時、ハノイ市ハイバーチュン区ファムディンホー街区在住のグエン・ゴック・クアンさん(男性・61歳...
 住商アグロインターナショナル株式会社(住商アグロ、東京都千代田区)は、ベトナムの農業資材販売会社で...
 ベトナム最大の企業管理職向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を運営するアンファベ(Anph...
 南部メコンデルタ地方カマウ省人民委員会は19日、ダムゾイ郡でダムゾイ・カイヌオック・チャーラー(Dam...
 ホーチミン市人民委員会は21日、12月の商業運転開始を予定している都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~...
 21日から23日までの日程でマレーシアを公式訪問中のトー・ラム書記長は21日、最高儀礼に則り盛大に執り...
 ドミニカ共和国を公式訪問中のファム・ミン・チン首相は現地時間20日、ルイス・ロドルフォ・アビナデル...
 米不動産サービス大手クッシュマン&ウェイクフィールド(Cushman & Wakefield=C&W)がこのほど発表した...
 南中部高原地方総合病院は19日、自宅で調理したヒキガエルの肉と卵を食べた児童2人が中毒を起こしたと...
 ベトナム国家大学ホーチミン市校(ホーチミン市国家大学=VNU-HCM)傘下の政策開発研究所が先般発表した...
 医療機関向けパッケージソフトウェアの製造・販売を手掛ける株式会社エクセル・クリエイツ(大阪府大阪...
トップページに戻る