ベトナム映画「走れロム」特別先行上映会、ゲストの岩井志麻子氏が赤裸々トーク

2021/06/30 12:00 JST配信

 7月9日(金)に日本で公開されるベトナム映画「走れロム(原題:Rom)」の劇場公開に先駆け、28日に特別先行上映会がヒューマントラストシネマ渋谷で開催された。

(C) 2019 HK FILM All Rights Reserved.
(C) 2019 HK FILM All Rights Reserved.

 イベントでは、ベトナムの愛人との日々を綴った自伝的官能小説「チャイ・コイ」などベトナムを舞台にした著書でも知られる作家・岩井志麻子氏と、在日ベトナム人問題を取材し続け、現地事情にも詳しいジャーナリスト・出井康博氏をトークゲストに迎え、観光客の知らないディープなベトナム社会のタブーに切り込んだ。

 『走れロム』の舞台であるベトナムについて聞かれた岩井氏は、「ベトナムには、書き下ろしのための取材で2001年に初めて行ったのですが、それまで縁もゆかりもなかったんです。でも行ってみたらレストランに男前がいた(笑)。その愛人と実は20年くらい続いているんですよ。愛人にも家庭があり、今では彼の妻や家族とも仲良くなっちゃって。『走れロム』主人公のロムが、私の愛人の息子にそっくり!すばしっこくて、儚げで、でもどこか逞しい感じも」と赤裸々なエピソードを交えてベトナムとの縁を語った。

 劇中で描かれる“闇くじ“について、出井氏からは「ベトナムでは、日本よりもずっと宝くじが盛んなんです。地域や省ごとに当選番号の発表が毎日夕方にあり、6桁の番号を当てるギャンブルです。でも、こうした政府公認の正規くじを購入する人は多くなく、正規くじなど足元に及ばないほど、“闇くじ”が人気なんです。“闇くじ”でも、正規くじの当選番号が採用されていて、当てるのは下2桁だけなので、オッズは70倍と、正規くじよりずっと高い。しかも、2桁の数字であれば100分の1の確率で当たる。『100分の1』なら当てられるかもと安易に考え、多くの人が闇くじにハマっていくんです」と“闇くじ“の背景を解説した。

 また、チャン・タン・フイ(Tran Thanh Huy)監督について、「ベトナムには日本のような表現の自由はなく、政府にとって不都合な実態は、たとえフィクションの映画であっても描くことは許されない。当局の検閲で修正を余儀なくされながら、まさに命がけで“闇くじ”をテーマにベトナム社会の暗部を描き切ったフイ監督の勇気に拍手を送りたい」とフイ監督の功績をたたえた。

 岩井氏は、「ベトナムは呑気な南国かと思ったら、やはり社会主義国か、と何でも袖の下という感じで、厳しいのか緩いのかわからない国です」と話し、「ホーチミンは少し見ない間にものすごく発展し、都会の街並みになりました。昔はストリートチルドレンも多く、私も映画に出てくるような闇くじを売りに来る子供に遭遇したことがあります。まぁでも、私の愛人のベトナム人は、私という日本の大当たりくじを引き当てた!ってことですよね(笑)」と会場を笑いに包んだ。

 最後に映画の見どころについて、「ベトナムのリアルな、剥き出しの街並みが感じられる映画。社会問題も描かれていますが、この映画のエネルギッシュな凄さを感じて、ああ、ベトナムに行きたい!楽しそう!と思ったり、私のように下世話でミーハーな目で見ることは、そんなに悪いことではないとも思います」と語り、「私も、コロナが明けたらベトナムに行きたいですね。愛人に会いたいです!」と岩井ワールド全開の密度の濃いトークイベントとなった。

『走れロム』公式サイト:https://www.rom-movie.jp/

【ストーリー】

活気に満ちたサイゴンの路地裏にある古い集合住宅。住民たちは投資家を装う詐欺師の債権者から多額の借金を背負い、アパートを維持するため大金が当たる違法宝くじに熱中している。14歳の孤児ロムは、そこで宝くじの当せん番号の予想屋として生計を立てていた。地上げ屋から立ち退きを迫られている裏町の住民たちを救うため、生き別れになった両親を捜すため、ロムは危険な違法宝くじで一攫千金の賭けに出る――!

【予告編】

【ポスター】

(C) 2019 HK FILM All Rights Reserved.

[2021年6月29日 ベトジョーニュース A]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 日本で絶賛公開中のベトナム映画『走れロム(原題:Rom)』が、広島県福山市の映画館「福山駅前シネマ
 2020年9月にベトナムで公開され、今年7月9日には日本でも公開予定のベトナム映画「走れロム(原題:Rom)
 ベトナム映画「走れロム(原題:Rom)」の日本公開日が、当初予定の6月11日(金)から7月9日(金)に変更と
 ベトナム映画「走れロム(原題:Rom)」が、6月11日から日本で公開される。同日からヒューマントラスト
 ベトナム映画「走れロム(原題:Rom)」が、6月に日本で公開される。ヒューマントラストシネマ渋谷ほか
 第24回釜山国際映画祭(24th Busan International Film Festival=BIFF)が、10月3日から12日にかけて韓...
 第24回釜山国際映画祭(24th Busan International Film Festival=BIFF)が、10月3日から12日にかけて韓...

新着ニュース一覧

 商工省によると、2025年におけるベトナムの輸出入総額は推定で約9200億USD(約144兆円)となり、過去最高...
 ベトナム建設省は19日、ラオカイ~ハノイ~ハイフォン間鉄道建設事業の第1サブプロジェクトの着工式を...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ホーチミン市都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~スオイティエン間)を運行する同市メトロ1号線有限会社...
 ある日の午後、60代と思われる男性が、壊れたデュポン(Dupont)製のライターを手に、ホーチミン市チョロ...
 軍事ウェブサイトのグローバル・ファイアパワー(Global Firepower=GFP)が発表した2025年版の世界軍事...
 ファム・ミン・チン首相は20日、ペトロベトナムグループ(Petrovietnam=PVN)のレ・マイン・フン会長を...
 再生可能エネルギー事業を手掛けるイーレックス株式会社(東京都中央区)は、同社が開発を進めている西北...
 一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は15日、ベトナムの新たなドローン産業団体であるベトナム低...
 電子機器・電気機械器具の製造・販売を手掛けるコーセル株式会社(富山県富山市)は、海外子会社(非連結...
 ベトナムで初となる軽量軌道交通(LRT)路線が19日、南部メコンデルタ地方アンザン省フーコック特区(島)...
 米国の調査機関World Population Review(WPR)が先般発表した
 ホーチミン市では現在、計1万8613台のタクシーが運行されており、このうち電気自動車(EV)が1万3124台で...
 レ・タイン・ロン副首相はこのほど、「2025~2035年の外国語教育強化計画および2045年までのビジョン」...
 ベトナム国家大学ホーチミン市校(ホーチミン市国家大学=VNU-HCM)の副学長を務めていたグエン・ティ・...
トップページに戻る