ベトナムで歩きながらの宝くじ売りと言えば、子供が家計を助けるためや、お年寄りが現金収入を得るための最も一般的な手段となっている。しかしメコンデルタの中心都市カントー市では、そんな低所得者で、しかも抵抗できない老人、子供、あるいは身体障害者の宝くじ売りを狙った宝くじ持ち逃げ事件が多発している。
両親に捨てられ、幼い頃から厳しい暮らしに耐え、現在では宝くじ売りで生計を立てる今年76歳になるBさん(女性)もその被害者だ。ある日青年に呼び止められ、いつものように客が好きな番号を選べるよう手持ちのくじすべてを手渡したところ、男は200枚すべてのくじを持って逃げてしまった。
この他、被害者は11歳の少女や、体の不自由なお年寄りなど多くに及ぶ。宝くじを売って手に入るお金はわずかだが、彼らにとって、貴重な生活費にほかならない。この事件はそんなわずかな販売手数料で生活している弱者から、種金である販売用の宝くじそのものを大量に奪う卑劣な事件である。