5月31日午後5時ごろに北中部地方タインホア省タックタイン郡(huyen Thach Thanh)にあるベトナム人民軍の刑務所「T-974」から脱獄した受刑者が、翌6月1日午後3時ごろ、刑務所から約30km離れた住宅街で発見・逮捕された。
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逮捕されたのは、以前にも2度の脱獄事件を起こしたチエウ・クアン・ス受刑者(男・31歳、東北部地方タイグエン省出身)。
ス受刑者は脱獄後、住民の自転車を盗み、これを10万VND(約556円)余りで売りさばいて現金を得ていたことが分かった。ス受刑者は6月1日午後1時半ごろ、ハーチュン郡イエンズオン村(xa Yen Duong, huyen Ha Trung)の住宅街の路地を歩いているところを地元住民によって目撃されていた。
発見時はマスクを着用し、ベトナム人民軍のデザインの硬い帽子をかぶっていた。国道1A号線でハノイ市行きの長距離バスを呼び止めようとしていたス受刑者だったが、乗せてくれるバスが見つからなかったため、国道を渡ってブン(Vung)市場に移動し、市場の入り口にある店でチェー(ベトナム風ぜんざい)2杯を買って外で食べた。
村民らはその間、秘密裏にこの「ス受刑者らしき男」を監視し、警察と自衛民兵に通報した。村民、警察、自衛民兵合わせて約10人が午後2時半ごろ、ス受刑者を取り押さえた。ス受刑者は抵抗せず、時折笑顔も見せていた。ハーチュン郡警察署で捜査を受けた後、夕方に軍に身柄を移された。
ス受刑者にチェーを売ったH・T・Gさん(女性・59歳)によると、受刑者はきちんと挨拶し、行儀も良かったという。「あの子(ス受刑者)から10万VND(約556円)を受け取り、チェー2杯分の2万VND(約111円)を差し引いておつりは8万VND(約444円)のはずでしたが、孫娘が間違って17万VND(約944円)を渡したところ、『これでは商売にならないでしょう』と言って9万VND(約500円)を返してくれましたよ」と語った。
ス受刑者は軍特殊部隊の元隊員で第1軍区に所属していたが、軍から頻繁に逃亡しインターネットカフェでゲームに興じていた。2012年にはハノイ市で強盗殺人事件を起こし、第1軍区の軍事裁判所から殺人罪、強盗罪、軍逃亡罪で終身刑を言い渡された。
ス受刑者は南中部沿岸地方クアンガイ省にある刑務所で服役していたが、2015年11月に1度目の脱獄。翌12月にハノイ市のインターネットカフェでゲームをして遊んでいるところを逮捕された。2020年6月、再び同省の刑務所から脱獄し、2週間後にインターネットカフェで逮捕された。今回の脱獄が3度目となった。
ス受刑者の母親であるP・T・Tさん(タイグエン省ダイトゥー郡=huyen Dai Tu在住)によると、ス受刑者は子供の頃、言うことをよく聞く素直な子供で、勉強もできて多くの賞状を授与されていたという。
この脱獄事件は国民の間で大きな話題になっており、その多くはス受刑者の抜群な脱獄スキルに脱帽するもので、「4度目がないよう、刑務所には『ス専用のパソコン』を設置すべき」など、対策を提案する意見も多くあがっている。