北部タインホア省の海沿いに位置するハウロック県の市場には、髪買いおばちゃんが出現する。同県ホアロック村のゲー市場に至っては、市場内に髪の売買専門ブースがあるほどだ。
髪買いおばちゃんたちは、「髪売らんかねー。」「お嬢ちゃん、髪を売ってご主人にお肉を食べさせてあげなさいよ。」などと売り手を捜し、値段交渉が成立すると持参の鋏で髪をカット、ハノイやハイフォンのかつら業者に売るという。「何しろ都会では今つけ毛(エクステンション)が流行っているからね」。「だいたい、いなかの女はみんな髪を伸ばしているけど、そんな髪じゃ工場で働けない。あたしはその村の女たちの髪の長さを見れば、その村の工業化度合いがわかるんだよ」。
髪の相場は、売り手の髪の長さによって異なる。買取は最低30センチメートルからで、その場合5万ドン。30センチから50センチまでの場合、7万ドンから8万ドン。もっとも商品価値のあるのは、足のかかとまでの長さの髪で、価格は20万ドン以上。一回の買取あたり、儲けは1万ドンから1万5,000ドンのため、おばちゃんたちは一家の大黒柱だそうだ。
ベトナム女性、とりわけ農村女性にとって命とも言える髪、売り手の気持ちはどうなのだろうか? 小紙の取材に対し、2万5,000ドンで髪を売ったばかりの女性はこう答えた。
「1年近く髪を伸ばしたの。もちろん髪を切るのは悲しいわ。でも、まだ恋人がいないから...かまわないのよ。でもあのおばさん、髪を切るのがへたくそすぎ。後で友達に切り直してもらわなきゃ、両親に会わせる顔がないわ!」。市場に出入りする売り子たちによれば、夫にむりやり髪を売らされた妻の話、あまりに髪を短く、まるで男性のヘアスタイルのように切ってしまい、トラブルになったケース、など、髪の売買に関する様々な逸話があるそうだ。