結婚する男女が、幅3メートル、長さ3メートル分の道路を作るのに必要なセメントを寄付することが習慣になっている村があるという。結婚式の前、この村の花婿は必ずこの道を通って花嫁を迎えに行く。人々の愛と慈善の心から成るこの道は「幸福の道」と呼ばれ、今や5キロメートル近くの長さになっている。
1997年10月、中部トゥアティエン・フエ省フォンディエン郡ディエンホア村の人民委員会は、何か意義のある新しい生活文化となるようなものを作れないかと考えた。この道のアイデアはそこから生まれ、この村の人々の習慣といえるまでになった。村の道路をつくるのに寄付することは、結婚という人生の大きな節目を迎えるのにとても良い記念になるうえ、村のために貢献できるという満足感も得られる。
人民委員会の庁舎から、まもなく結婚する男女が手を取り合って出てくる。彼らは婚姻届と道路の寄付台帳にサインをして出てきたところだ。この10年の間にこうした光景は見慣れたものになった。これまでに寄付した男女は1400組、道路には3メートルごとに数字の書かれたプレートが埋め込まれている。
この習慣ができる以前に結婚した夫婦でも、寄付をしたいという人は多い。この前寄付をしたという高齢の女性はこう語った。「私たち夫婦はもう年だし結婚してからずいぶんたつけれど、ご先祖様のところに帰る前にぜひ寄付をしたいと思っていたの」。この道はもはや新婚夫婦のみならず、すべての村の人にとって幸せな人生の象徴となっている。
沿道にはヤシが生い茂り、石のベンチも置かれている。道の途中にある運動場は村民の憩いの場となっている。同村人民委のタオ文化情報課長は熱く語る。「この習慣は村民にすっかり根付いているので、今後も続けていきたい。村の道がコンクリート(舗装)化された後は、別の何かを考えたい。もちろん村民の文化的生活に寄与するようなものをね」。