「ベトナムを訪れたことのある若者は、10年後か20年後かにまた戻ってくる。私はその種をまいているのです」。在米越僑のブ・ドク・ブオン教授はそう語る。
この3年間、彼はアメリカ人や在米越僑の若者たちのベトナム訪問ツアーを主催している。今年8月にも10人以上の若者を連れて、北部のサパやハロン市から中部のダナン市、南部のホーチミン市、メコンデルタ地方のカントー市などを訪れ、ベトナムの人と国土への理解を深める旅を行った。ベトナムには「知らなければ愛せない」という意味のことわざがある。知ることではじめて愛情も生まれてくる、というわけだ。
最近になって彼は、20年前にまいた種に「実」がなったことを感じている。当時はベトナムがまだ世界に開かれておらず、行き来も今のように自由ではなかった。彼は何人かのアメリカ人のベトナム訪問を手伝ったが、そのうちの数人は今ベトナムを含む東南アジアで働いている。
アメリカ生まれの越僑2世は、ベトナムに対して正しい認識を持っているとは限らない。彼が主催するベトナム訪問ツアーは、確かに彼らのベトナムに対する見方を変えてきた。しかし、これまでの成果について、彼は控えめにこう語る。「人それぞれ自分のできる範囲で目標を持って生きていくべきだと思う。私ができるのは、若者たちがベトナムに対する理解を深める手助けをすることだけだ」。
ブオン教授は40年以上前にアメリカに留学しそのまま定住した。だから、アメリカのベトナム人コミュニティで起きる問題についてもよく分かっている。彼自身、言葉も通じない厳しい状況の中で身を立ててきた。そんな経験からアメリカで仕事や生活に困っている多くのベトナム人を助けてきた。
彼はこれまでさまざまな職を経験してきたが、移民や難民の支援に関する仕事が多い。同胞が生活できるようなんとかしたいという思いから、移民支援の非営利団体で20年間働いたという。今はカリフォルニア州のデアンザ大学で社会学を教えている。