汗をかきながら自分を抱えてトイレに連れて行ってくれる妻を見て、ビンさんの胸は苦しくなった。「僕たちはこれで終わりにしないか。このような状況でいるのは君が気の毒だ」。
(C) vnexpress |
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「私は障害者で、この3年間は両脚が完全に麻痺しています。私たち夫婦はこれまでお互いに信頼し合ってきました。私を見捨てないでいてくれた妻に感謝しています」。ホアビン省マイチャウ郡(huyen Mai Chau)在住のディン・コン・ビンさん(男性・30歳)は、少数民族のムオン族だ。
2017年はじめ、ハノイ市でレンガ職人として働いていたときに突然の腰痛に襲われた。治療しても一向に良くならず、同じ症状を持つ多くの人が腰に痛み止めの注射を打っているのを知り、ビンさんもそれに倣うことにした。1年後、注射の痕が膿んで腫れるようになったが、そのままにしておいたところ脊髄にまで感染症が広がった。
髄液を吸引する手術を受けた後、続けて脚の手術も受けた。そして、尾骨から下の感覚がなくなり、ビンさんは入院中のベッドで鬱々と過ごした。1人で用を足すことができず、初めて妻にオムツをつけてもらった日、「私の人生は終わったも同然だ」と涙を流した。
退院後、健康な青年だったビンさんの生活の全てが、妻のブイ・ティ・ホアさんに委ねられることとなった。自宅は洗面所が外にある土壁の家のため、ホアさんは風呂やトイレの度に夫を抱きかかえて運び、1年以上世話を続けた。当時、家族の生計は田んぼとホアさんの賃金が頼りだった。
1人で夫と子供の世話を続けるうち、ホアさんの目尻の皺は日に日に増えていき、28歳には見えないくらい老けていると友人たちから言われていた。
座位や横位で過ごさなければならないため、ビンさんの尾骨は常に潰瘍化していたが、ビンさんは麻痺のために異常を感じることもできなかった。快活で明るい性格だったビンさんは、無口で神経質な気質に変わってしまった。
夫の気晴らしになるよう、ホアさんは時々彼をバイクに乗せ、風を浴びさせた。しかし、不注意から夫のふくらはぎがバイクのマフラーに接触してしまい、火傷させてしまったこともある。「火傷しても、痛みも何も感じないんです」とビンさんは打ち明けた。