火傷の痕ですっかり変わり果てた姿で退院したブー・クオック・リンさんの人生は、もはやそこで終わったかのように思われた。しかし、人生を有意義に過ごしたいという夢とエネルギーによって、リンさんの人生は再び幕を開けた。
(C) vnexpress |
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12年前、3歳になったばかりのリンさんは父親にガソリンをかけられ、火をつけられて身体の87%に火傷を負った。リンさんの上半身はボールのように縮み、首と肩が癒着して顔も変形してしまった。口は引き裂かれ、顔の皮膚は萎縮してしわになり、指は癒着して動かすことができなくなった。入院した時点で医師は、生存は難しいだろうと予想していた。
それでもリンさんは最も厳しい時期を乗り越え、現在まで元気に暮らしている。リンさんの母親であるレ・ティ・ハーさんにとって、それは奇跡のようなことだった。
「4か月間の入院を終えて帰宅することになった時、リンが自分の姿を見たら泣いてしまうのではないかと心配で、家中の鏡をしまいました」とハーさんは語る。しかし、成長するにつれてリンさんは自信を持って鏡の前に立つようになり、「僕、宇宙人みたい?」とよく母親に冗談を言った。
そして癒着した指で櫛を持ち、頭頂部に残っている髪にブラッシングをしながら、「SF映画に出てくる宇宙人はどれも頭が大きくて、皮膚はしわだらけで、僕みたいだから」と説明した。とはいえ、リンさんがいつもこの調子でポジティブなわけではなかった。
何度も皮膚移植手術を受けてきたが、リンさんの身体には今でも多くの火傷の痕が残っている。リンさんは以前、自分の容姿のせいで人から指をさされるのが怖くなり、外に出る時はマスクをしてタオルで顔を覆っていた。
そんな息子の姿を見て、母親のハーさんは「他人があなたを見捨てているんじゃなくて、あなた自身が自分を見捨てているのよ」とリンさんを諭した。ハーさんはどんな状況であっても、息子には勇気を持って現実に向き合ってほしいと願っていた。
通りに出るたびに多くの視線を受けるリンさんは、母親のアドバイスを実践して、相手に視線を返すことにした。そうすると、リンさんを見ていた人は気まずそうに目を逸らしてどこかへ行ってしまうのだ。リンさんを見て怖がって泣き出した子供には、自分の顔や腕にある蜘蛛の巣のような火傷の痕を見せて、「スパイダーマンみたいでしょ?」と話しかけた。