ベトナムのセキュリティ事情(9):センサーの活用事例その2

2015/12/19 06:00 JST配信

 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。

 前回の記事「ベトナムのセキュリティ事情(8):センサーの活用事例その1」の最後に、「赤外線が張り巡らされた金庫室の中を、特殊なメガネを装着して、アクロバティックに潜り抜けるシーンがありますが、実は演出上の話で、現実にはありません」と書きました。

 その意味では、今回の記事は、ミッション・インポッシブル系の映画のシーンを楽しみにされている読者の夢を壊してしまうような内容かもしれません。とは言え現実の世界では、きちんと警備が機能しており、貴重な物品は守られているということも理解していただきたいと考えます。

建物の中の部屋を守る「空間センサー」

 では、本題に入りましょう。

 前回、建物の外周を守るには、「赤外線センサー」を使うという話をしました。それに対して、建物の中の部屋を守るには「受動赤外線検知器」という機器を使用します。一般に「空間センサー」と呼ばれるもので、以下このように呼ぶことにします。

 空間センサーには、さまざまな形のものがあり、写真1のようなものや、円形のドーム型のようなものもあります。

 これらは、正式名称の中に「受動赤外線検知」とあるように、「赤外線を受ける」機能を持っています。前回の赤外線センサーは、「赤外線を放射する」機能を持っていましたので、つまり反対の動きをするということです。

「空間センサー」の動作原理

 この世に存在するすべての物体から赤外線が放射されています。部屋の床、壁、家具などからも赤外線が放射されています。

 空間センサーの動作原理は、検出している部屋の背景温度(下図a)と、侵入者の表面温度の差を検出(下図b)して信号に変えます。

 空間センサーが赤外線を受けている範囲に人が侵入すると、それまでの背景物体(図aの壁)から放射されている赤外線が侵入者で遮断され、代わりに人の表面から放射されている赤外線を受けます。この壁の表面温度と人体の表面温度の違いを検知して警報を出力するのです。

検地精度を上げる工夫

 しかし、温度差だけでは、空気口からの外気吹き込みやFAXからの紙出力、小動物などの動きでも警報が出てしまいます。そこで、最近の空間センサーでは、物体の大きさや移動の速度も感知して、検知精度を上げるような工夫がなされています。

 つまり、ネズミなどの小動物が移動する速さではなく、侵入者が忍び歩く程度の速さで一番感度が高くなるように設定されています。また、もちろん上述の内容だけではなく、各メーカー独自の検出アルゴリズムで検知精度を高める工夫が空間センサーには施されています。

 ここまで見て来たように、空間センサーは何かを放射して侵入者を見つけるのではありません。自然に放射されている赤外線の温度差を検出するのです。映画で描写されるようなシーンが現実的でないことが、改めてご理解いただけたのではないでしょうか?

 セキュリティ対策として、コラムの4回目から6回にわたり警備に使用される機器を説明して来ました。次回からは、ベトナムのオフィスや工場で日々発生する内部不正について説明していきます。

著者紹介
安立 光孝 (あだち みつたか)

ALSOK (VIET NAM) CO.,LTD  代表取締役社長

コンピュータメーカーで17年間システムエンジニアとして従事。製造業における生産管理システムやファクトリオートメーションシステムの構築を担当。1998年から4年間、米国シリコンバレーに駐在し、ITセキュリティのベンチャー企業を発掘、日本市場への参入を支援。2007年に綜合警備保障株式会社(ALSOK)入社。新規事業の「情報警備」事業を立ち上げ、2014年4月より現職。

ウェブサイト:https://www.alsok.com.vn/

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