ベトナムのセキュリティ事情(最終回):ベトナムの警備業と警備員について

2016/08/13 06:00 JST配信

 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。

(C) ALSOKベトナム
(C) ALSOKベトナム

 これまでベトナムのセキュリティ事情について書いて来ましたが、今回が最終回です。最終回は、ベトナムの警備業および警備員について説明します。

ベトナムの警備業および警備会社の数

 日本国内では、「警備業法」と呼ばれる法律が1972(昭和47年)に施行され、既に40年以上の歴史があります。2016年3月末の時点で、警備会社として登録された会社は9240社になります。

 ベトナムはというと、日本の警備業法に相当する法律として、2008年に施行された政令52号/2008/ND-CPと2009年に施行された通達45号/2009/TT-BCAがあり、それぞれ警備会社の定義・警備員の職務・外資の出資規制などが決められています。

 国内の警備会社の数は、公式数値はなくあくまで弊社調べの参考数値ですが、約600社あると言われています。南部のホーチミン市ビンズオン省ドンナイ省併せて約350社、北部のハノイ市ハイフォン市併せて約120社、ダナン市その他で130社程度のようです。

警備員の役割とは

 警備員は本来、会社オフィスや工場・店舗のセキュリティを維持する重要な任務を担っています。以下に、警備員を管理する際の基本的な項目を挙げます。少し専門的になりますが、ご一読下さい。

1.警備員に、自分たちの仕事は重要な仕事であることを十分自覚させる。
2.制服・制帽を着用させ、接客態度等を指導・教育する。
3.警備員は、その上司に常に全ての出来事を報告し、記録に残すよう習慣付ける。
4.警備計画(パトロールの頻度・場所、警備員の仕事の範囲など)を立案し、それに基づいた行動をさせる。
5.警備員を通じて重要情報が外部へ漏えいしないよう、警備員の関与する情報の質と量をコントロールする。
6.緊急時の連絡方法(だれに・何を・どのように伝えるか)について精通させる。
7.警備先の防火管理計画、消防計画について精通させる。
8.必要に応じて初期消火の訓練に参加させ、消防用設備の取り扱い方法を習得させる。
9.工場等構内に入る車両の駐車位置、外来者の面談相手、行き先などについて、責任を持って把握させる。
10.警備員には、出来る限り社員やワーカー・来客・出入り業者と、仕事以外の接触をさせない。

 日本では当たり前のこれらのことが、ここベトナムでは、なかなか上手く出来ません。例えば10番目では、工場などでのレンタカードライバーと警備員のトラブルがあります。待機時間中に世間話をする、ギャンブルをする、果ては喧嘩をするなどのトラブルが発生します。出入りの業者との癒着や、犯罪への誘惑も多いため、可能な限り仕事以外の接触をさせないよう注意する必要があります。

 また、ご存じのようにベトナムではフェイスブック(Facebook)の利用率が高いため、警備先の情報をアップするような事例もあるので、ネット上での情報漏えいにも注意が必要です。

警備員を最大限活用するために

 ベトナムの警備業界は、まだまだ発展途上にあり、警備員の待遇や給与も整備されていません。このような状況の中で、いかに警備員を上手く活用できるか、品質の高い警備を提供できるか、様々な工夫がなされています。

 特に、警備先の環境がパフォーマンスに大きく影響します。以下、弊社がお客様にお願いしている項目です。

1.日本人・スタッフが出退勤時に車の窓を開けて挨拶・敬意を表す。
2.日本人が警備員にベトナム語で話しかける(片言、挨拶程度でも可)。
3.会社スタッフやワーカーと同様に警備員に食事(昼食)を支給する。
4.ウォーターサーバーを用意する。
5.警備室に空調機を設置する。
6.テト(旧正月)の時などは少額でよいのでお年玉を渡す。

 これらの工夫で警備員のやる気がアップします。可能な範囲で結構ですので、是非実施していただきたいと考えています。

巡回管理システムの活用

 ベトナムにおいては、「巡回管理システム」という機器が普及しています。仕組みは単純で、写真1にあるようなスティックを警備員に持たせて、工場などの敷地内を巡回させ、巡回ルート上に複数埋め込んだポイント(写真2)にタッチさせます。

 タッチした際に位置や時間などの情報がスティック内のメモリに記憶されます。後でスティックからPCにデータをダウンロードし、警備員が時間通りに巡回しているかなどの管理に使用します。

 このシステムは警備員専用というわけではなく、総務スタッフやメンテナンススタッフの設備内巡回や、掃除業者の清掃状況の確認などにも幅広く活用可能です。

最後に

 警備業に限らずベトナム国内のサービス業のレベルは日本と比較すると、まだまだ低いのが現状です。単純に「人」の問題と片付けてしまうのは簡単ですが、ほんの少しの工夫や、機器を使用した仕組み作りでサービス品質を向上させることが出来ます。

 これまで、12回に渡りベトナムのセキュリティ事情について説明しました。治安に関しては、皆さんが不安に感じていることや、不満に思われていることが多々あるはずです。しかしながら、皆さんも日々感じられているとおり、ベトナムはますます発展して行くでしょう。

 それと共にベトナムの警備業界も発展して行くと私は信じています。警備業界の発展に少しでも寄与し、警備員の社会的地位の向上や待遇の改善に貢献できるよう、今後も取り組んで行く所存です。

ありがとうございました。

著者紹介
安立 光孝 (あだち みつたか)

ALSOK (VIET NAM) CO.,LTD  代表取締役社長

コンピュータメーカーで17年間システムエンジニアとして従事。製造業における生産管理システムやファクトリオートメーションシステムの構築を担当。1998年から4年間、米国シリコンバレーに駐在し、ITセキュリティのベンチャー企業を発掘、日本市場への参入を支援。2007年に綜合警備保障株式会社(ALSOK)入社。新規事業の「情報警備」事業を立ち上げ、2014年4月より現職。

ウェブサイト:https://www.alsok.com.vn/

ベトナムにおけるセキュリティー事情
その他の記事はこちら>
[2016年8月13日 ベトジョーコラム A]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。  前回までは、オフィスや工場で発生する窃盗への...
 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。  今回は、内部不正について書く予定でしたが、予...
 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。  前回の記事「ベトナ
 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。  前回の記事「ベトナ
 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。今回から数回に分けて、警備業界の中でも技術革新が最...
 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。  今回は、「防止」の観点から、工場やオフィスの...
 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。  前回(工場のセキュリ
 皆さん、こんにちは。ALSOKベトナムの安立です。  前回、ベトナムの工場は、「隙あらば」と狙って...

新着ニュース一覧

 カンボジア公式訪問を開始したチャン・タイン・マン国会議長は21日、カンボジアの首都プノンペンで、同...
 ベトナム共産党政治局・書記局は20日に開かれた会合で、政治局員・国会共産党連合会書記・国会議長在任...
 ワインの輸入販売などを手掛けるエノテカ株式会社(東京都港区)は11月25日、ホーチミン市1区のホーチミ...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 午後3時、ハノイ市ハイバーチュン区ファムディンホー街区在住のグエン・ゴック・クアンさん(男性・61歳...
 住商アグロインターナショナル株式会社(住商アグロ、東京都千代田区)は、ベトナムの農業資材販売会社で...
 ベトナム最大の企業管理職向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を運営するアンファベ(Anph...
 南部メコンデルタ地方カマウ省人民委員会は19日、ダムゾイ郡でダムゾイ・カイヌオック・チャーラー(Dam...
 ホーチミン市人民委員会は21日、12月の商業運転開始を予定している都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~...
 21日から23日までの日程でマレーシアを公式訪問中のトー・ラム書記長は21日、最高儀礼に則り盛大に執り...
 ドミニカ共和国を公式訪問中のファム・ミン・チン首相は現地時間20日、ルイス・ロドルフォ・アビナデル...
 米不動産サービス大手クッシュマン&ウェイクフィールド(Cushman & Wakefield=C&W)がこのほど発表した...
 南中部高原地方総合病院は19日、自宅で調理したヒキガエルの肉と卵を食べた児童2人が中毒を起こしたと...
 ベトナム国家大学ホーチミン市校(ホーチミン市国家大学=VNU-HCM)傘下の政策開発研究所が先般発表した...
 医療機関向けパッケージソフトウェアの製造・販売を手掛ける株式会社エクセル・クリエイツ(大阪府大阪...
 ハノイ市ナムトゥーリエム区の国立展示建設センター(1 Do Duc Duc, quan Nam Tu Liem, TP. Ha Noi)で、...
トップページに戻る