このところハノイの一部の地域で、地下水の過剰な汲み上げによる地盤沈下が深刻化している。中でもタインコン地区、バーディン区では年間41~42ミリの地盤沈下を記録したところもある。さらに地下水の品質低下や、枯渇の危機も指摘されている。
ハノイの生活・生産用水は、現在も主に地下水に頼っている。ある統計によると、現在ハノイ市内には17万か所以上の井戸があり、主に市の南側に集中している。このうちおよそ10万か所が個人の井戸だ。人々がむやみに井戸を掘り、地下水を汲み上げていることに加え、近年急速に進むコンクリート化により、雨水が地下に浸透しにくくなっている。さらに井戸から汚水が流れ込み、地下水が汚染されているという実態もある。
しかしここで考えなければならないのは、なぜ人々は井戸を掘るのか、ということだ。ホアンマイ区に住む老婦人は、ここでは井戸を掘らなければ生活できないと話す。「この辺りの地下水はどんどん減り続けているから、時々井戸をもっと深く掘る必要がある。環境には良くないことは承知しているけれど、仕方がない。だって市の水道はここまで来ていないんだもの」