がんと闘いながら記憶喪失の親友と暮らす、70代の2人の友情

2021/04/04 05:29 JST配信

 「彼から離れたいと思うこともたくさんありますが、やっぱり彼が気の毒で。タイは昔はとても優しくて、いつも人に騙されていました。今は外に出れば迷子になってしまうのでかわいそうです。ある時、通りに出た彼が私の姿を見ると嬉しそうにし、泣きながら私のほうに駆け出して転んでしまったこともあります。これもお互いの運命でしょう。彼の父親と私の母親の命日も同じ日なんですから」とロンさんは言葉を詰まらせた。

(C) thanhnien
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 そこまで話すと、ロンさんはテレビを見ているタイさんの方を向いて声をかけた。「タイ、ひげを切ってあげるからこっちにおいで。そんなに長いひげでどうやって食事ができるんだ」。ロンさんは薬箱から小さなはさみを取り出してタイさんのひげを整え、ひげの次は櫛を手にして髪の毛をとかした。その間、タイさんはただじっと座っていた。

 「昔、タイがまだ元気で記憶もあったころは一緒に仕事に出られたんですがね。仕事に連れて行って手伝いをさせるんですが、実際には彼は何もできなくて、それでも楽しかったです。今は彼も病気を患っているので、自宅で横になっているしかありません。1人で自宅に寝かせておくのは心配で、外出中に時間ができれば様子を見に帰っています」とロンさん。

 2人への支援を呼び掛けたことがあるグエン・ドー・チュック・フオンさん(女性・25歳)は、2人のことを知って、ホーチミン市にこんなにも美しい友情があったのかと心を打たれたのだという。「これまでたくさんの人に会い、様々な状況にある人たちを支援してきましたが、こんな気持ちにさせられる人たちに出会ったのは初めてでした」と打ち明けた。

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