30年間連れ添ってきた2人は、怒ったり愛したり、離れたりくっついたりを繰り返してきた。そんな今、ファム・ミン・ゴックさん(65歳)の最大の願いは、パートナーであるグエン・ティ・トゥイさん(67歳)の世話ができるように、晩年も健康でいることだという。
(C) dantri |
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南部メコンデルタ地方ロンアン省ドゥックホア郡タンフー村の墓地のそばに建つ小さな小屋に暮らす2人は、ともに生きてきた30年間でお互いを「妻」や「夫」と呼んだことは一度もないが、それでも2人の目にはいつも相手の姿が映っている。
ゴックさんは、幼いころから自分が同年代の他の女の子たちとは違うことに気づいていた。スカートを履いたり落ち着いた遊びをしたりするよりも、髪を短くして男の子たちとサッカーをするほうが好きだった。それでも当時は、祖父母を喜ばせたい一心で、髪を切るにも肩までは長さを残すようにしていた。
ゴックさんが自分の性別をはっきりと認識したのは、同じクラスの女の子を好きになったときだった。祖父母が亡くなると、ゴックさんは髪を切り、ホーチミン市で新たな冒険の旅を始めることにした。
「資源回収(ベーチャイ=ve chai)や建設作業員、住み込みの家政婦…呼ばれれば何でもやりました。自分の力で生きられればそれでよかったんです。だって、私は自分自身のことがわかっているのに、そのせいで家族を苦しめたり、誹謗中傷する人の相手をしたりすべきではありませんから」とゴックさん。
毎日路上で資源回収をしていたゴックさんは、天秤棒を担いで食べ物を売る手伝いをしていたトゥイさんと、たまたま知り合った。何度か冗談を言い合い、2人はすぐに仲良くなった。利便性を考えて2人で一緒に住むことになり、貧しい暮らしや家族と離れて育った幼少期という共通点から、2人の心はお互いに深く結びついていった。
ある日、宝くじを売りに行ったゴックさんが、誰かにぶつかられて腕を骨折してしまった。トゥイさんは慌てふためいて病院にお見舞いに行き、入院費も全額支払った。これがきっかけになり、2人の気持ちは「友達」を越えたのだった。