ベトナム労働市場に変化、給与以外の総合的価値がカギ

2026/08/18 15:40 JST配信

 採用・人事アドバイザリー会社であるリーラコーエンベトナム(Reeracoen Vietnam)が発表した「ベトナム労働者意識調査2026」によると、ベトナムの労働者の64%が2026年中の転職を計画しており、91%が新しい仕事探しに前向きであることが分かった。

(C) Reeracoen Vietnam
(C) Reeracoen Vietnam

 不確実な経済環境の中で、労働者は従来の給与重視から、ハイブリッドワークなどの柔軟な勤務形態や、ワークライフバランスやウェルビーイングなどの総合的な価値(トータルバリュー)を重視する傾向へ移行している。

 また、希望する働き方や海外勤務先については、ホーチミン市ハノイ市の間で明確な地域差が存在することが明らかになった。

調査の概要

 この調査は、2026年上半期(1~6月)に、ベトナム国内の労働者254人を対象に、オンラインアンケート形式で実施された。

 回答者のプロフィールは、25~44歳の層が80%(30~34歳が26%で最多)を占め、最終学歴は大学卒が81%となった。主な業種は製造業が25%、情報技術(IT)が10%、貿易・輸出入が10%、建設が9%だった。所在地別ではホーチミン市が54%、ハノイ市が26%となり、職位別ではスタッフ・ジュニア層が47%、マネージャー層が17%となっている。

給与から多様な価値へのシフト

 労働者が新しい職場を選ぶ際、基本給を最重要視する回答者は23%にとどまり、残りの77%はワークライフバランス、雇用の安定性、成長機会、企業文化、リーダーシップといった非金銭的な要因を重視している。

 労働者の67%は、より良い労働環境のためであれば減給を受け入れる意向を示しており、特に「個人のメンタルヘルス支援の充実」が提供される場合は、60%もの労働者が減給を受け入れると回答した。メンタルケアの充実度は、今や福利厚生の枠を超え、優秀な人材を獲得・定着させるための重要な要素として認識されている。

 このほか、減給を受け入れる代替条件としては、「より良いワークライフバランス」が45%、「高い雇用の安定性」が44%、「柔軟な働き方制度」が41%となった。

ハノイ市とホーチミン市で異なる傾向

 ベトナムの二大都市間では、労働者の志向に明確な違いが見られた。ホーチミン市の労働者は体験を重視する傾向が強く、転職先を選ぶ際の最優先事項に「ワークライフバランス」(21%)を挙げ、「基本給」(19%)を上回った。

 一方で、ハノイ市の労働者は成長を重視しており、「基本給」(30%)を最優先とし、「ワークライフバランス」(9%)を重視する割合は低かった。

 また、定着につながる要因でも、ハノイ市では「大幅な給与アップ」(71%)を求める割合がホーチミン市(50%)より大幅に高かった。

不確実な経済環境へのリスク認識

 2026年のベトナム経済環境の見通しについて、回答者の50%が「改善する」(大幅に改善17%、やや改善33%)と予想し、13%が「変化なし」と回答するなど、前向き・中立な見方が多数を占めた一方、37%は景気悪化を予想しており、意見が分かれた。

 また、現在の職務を「安定している」と感じている労働者は28%にとどまり、26%が「不安定」だと認識している。

 特にハノイ市では、景気が悪化すると予想する割合が37%に達し、ホーチミン市の29%を上回るなど、より悲観的な見方が強い。この景気感の違いが、ハノイ市における給与重視の姿勢を後押ししていると考えられる。

ハイブリッド勤務の標準化と勤務形態の好みの地域差

 勤務形態については、全体の65%がオフィス勤務とリモート勤務を組み合わせた「ハイブリッド勤務」を希望しており、これが現代のベトナムにおける基本的な期待値(前提条件)となっている。一方、主にオフィス勤務、または完全オフィス勤務を希望する割合は27%で、特に製造業や建設業などで目立つ。

 この勤務形態の好みには地域差があり、ホーチミン市では69%がハイブリッド勤務を希望するのに対し、ハノイ市では61%にとどまり、主に出社、または完全出社を希望する割合が37%と、ホーチミン市の25%よりも高かった。これは、ハノイ市のフォーマルな企業文化や通勤距離の短さが背景にある。

海外勤務志向と技術への高い適応力

 ベトナムの労働者の75%は外資系企業での就業を希望している。65%が今後3年以内の海外勤務に前向きで、希望する渡航先は両都市ともに日本が第1希望(ホーチミン市37%、ハノイ市31%)として最も人気を集めた。第2希望には違いが見られ、ホーチミン市では商業的な結びつきが強いシンガポール(23%)が選ばれた一方、ハノイ市ではヨーロッパ(24%)が好まれた。

 また、労働者の77%が職場での人工知能(AI)ツールの利用に抵抗はないと回答し、83%が企業主導のスキルアップ支援を期待しているなど、最新の技術への適応力や自己成長への意欲の高さも示された。


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