北部地方ソンラ省モックチャウ郡では、農業農村開発省の指導で数百戸の農家が数年前から日本茶の栽培に乗り出しており、その栽培総面積は5000ヘクタールに及ぶ。しかしこの「日本茶栽培計画」が今、破産の危機に瀕している。
日本茶を栽培する農民たちの話では、ベトナム茶総公社(VINATEA)の指示通りに栽培してみたものの、2、3週間でほとんどの苗が枯れてしまったうえ、わずかに育った木も貧弱で、栽培開始から数年経っても高さは50センチにも満たないという。というのも、そもそも気候や土が日本茶栽培に適していないのだから、育たないのも無理はない。また収穫できたとしても、茶葉の品質が悪くたいした収入にならないため、多くの農家は、茶畑の木の間にとうもろこしや豆を植えるなどして、かろうじて生計を立てている。もし同じ土地に伝統的な種類のお茶を栽培していたら、収入は現在の5、6倍で、家族を十分養えただろうに、とある農家は嘆く。
こうした状況にも関わらず、彼らが日本茶栽培をやめることができないのは、「日本茶栽培計画」の責任者が明確でないためだという。農家や地元人民委員会は、このまま日本茶栽培をしても成果は見込めないとして、計画に投資した地元のモックチャウ茶会社やVINATEA社に何度も計画中止を訴えてきた。実はモックチャウ茶会社も、計画中止となれば全ての茶葉を(品質に関わらず)買い取らなければならない契約になっているため、苦しい立場に立たされている。そして同社もまた、農業農村開発省に再三計画中止を求めてきた。
農業農村開発省は、最近になってようやくこれを了承したが、栽培農家には依然何の指示もなく、計画は宙に浮いたままとなっている。もしこの状態で栽培農家が自ら日本茶の栽培を放棄すれば、契約違反と見なされ、相当の罰則を科されることになる。さらに、30億ドン(約2200万円)以上の負債を農民たちが分担して返済しなければならない可能性もまだ残っている。しかし、取材に対し同省担当者は、「責任者がまだ決まっていないため、(決着がつくのは)いつになるか分からない」と答えるにとどまった。農民たちの訴えは、彼らには全く届いていないようだ。