西北部ソンラ省クインニャイ郡チエンコアン村の岩窟でこのほど、今から約2000年前にあたる青銅器時代のドンソン文化に属する岩窟墓が発見された。この岩窟墓は原位置を保っており、墓の中には人間の頭蓋骨及び下顎骨、4本の歯、2本の脛骨が残存していた。多数の副葬品から、当時の有力者の墓と見られている。
(C) tienphong 岩窟墓が発見されたランレ山 |
(C) tienphong 考古学者らによる調査 |
(C) tienphong 出土した副葬品の青銅戈 |
この岩窟墓は、近くに住む村人によって偶然発見されたもの。村人がランレ山の岩窟に石の塊で閉ざされた謎の入り口を発見し、石の塊を取り除いたところ、地表面からの深さ約1.5m、広さ約6m2の洞穴が現れたという。物好きな村人らが自ら「発掘」を行い、墓から人骨と多数の副葬品が出土した。
副葬品として、頭上からはドンソン文化の青銅戈(か) 5点など、複数の青銅器が出土。うち幾つかには文様が施されており、大きいものは長さ約30cmにもなる。また、首飾りと見られる白色及び黒色を呈する円筒形の石製ビーズが出土した。胸元からは直径約15cmの円形の青銅器が出土し、これは装身具の可能性もあるが用途は不明。このほか、脛骨の両側からは青銅斧2点が出土しており、いずれも同じくドンソン文化に属するものだという。
出土した遺物の様相から、考古学者らは同岩窟墓の年代を約2000年前と位置付けている。更に、多数の青銅製の武器を含む副葬品が伴っていたことから、この墓の主はドンソン文化の時代における有力者だったと考えられている。ただし、多くの場合は女性の墓に伴う装身具としてのビーズも多数出土しているため、被葬者の性別は明らかでない。
同省フーイエン郡ダードー地域のダー川流域では、これまでにもドンソン文化の遺跡が発見されている。今回の岩窟墓の発見により、新たに1遺跡が追加されたことになるものの、同省や西北部ライチャウ省、同ディエンビエン省におけるドンソン文化遺跡の数は少ない。しかしこれらの遺跡は、2000年前の同文化を担った人々が、ベトナム西北部にも存在していたことを示す貴重な痕跡となっている。