カンズオック郡(Huyện Cần Giuộc):
広大な稲作地を持つ。ござ、木製ボート作りなどで今も栄える伝統工芸村がある。ベトナム南部のサロン・ミュージック「ドン・カー・タイ・トゥー(Đờn ca tài tử)」の発祥地とされており、この音楽の始祖の1人と言われるグエン(阮)朝の楽官であるグエン・クアン・ダイ(Nguyễn Quang Đại)を祀るバンフオック祠(Đình Vạn Phước)がある。
ドン・カー・タイ・トゥーは19世紀末にフエの宮廷雅楽を元に作られた室内楽の一種で、結婚式や祭事などで演奏され、国内の音楽愛好家の間で親しまれてきた。ベトナム南部の歌舞劇「カイルオン(Cải lương)」はこの音楽から派生したものと言われている。ドン・カー・タイ・トゥーは主に月琴や独弦琴をはじめとする4種類の琴で演奏するが、楽曲によっては、これにギター、バイオリンなど他の弦楽器や笛などが加わることもある。演奏者は楽器を奏でながら昔話を元に作曲された唄を歌う。ベトナム南部の生活に根付いた文化であり、現在も幅広い年齢層に親しまれているドン・カー・タイ・トゥーは2013年にユネスコにより無形文化遺産に登録された。
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