ベトナム会計税務事情(3):不正対策、監査だけで十分?

2015/10/10 06:00 JST配信

 皆様、こんにちは。SCS Global Consultingの尾崎と申します。今回は会計税務コラム第3回として、ベトナムでの会計監査と不正事情について少しお話させて頂きます。

ベトナムでの会計監査制度について

 まずは堅苦しい話で恐縮ですが、制度の概要から説明します。ベトナムでは外資系企業であればどんなに小規模であっても1年に1回、監査法人による会計監査を受けることが法律で求められています。

 この1年に1回というのは、いつでもいいわけではなく、各企業の決算期終了後90日以内とされています。例えばベトナムで一般的な12月末決算の会社の場合は、翌年の3月末までに監査を受け、監査済みの決算書を税務局、統計局等の関連当局に提出する必要があります。

 たまに見かけますが、監査が終了したら安心してしまい、その後の決算書の当局への提出を失念してしまっている会社もございます。この最後のツメが甘いことで、罰金が命じられますので、要確認です。

監査でなにするの?

 それでは監査法人による監査って、実際なにをしているのでしょうか?そもそも監査法人という単語に馴染みがない方も多いと思います。過去にNHKで「監査法人」というドラマが放送され少しだけ知名度が上昇したかもしれませんが、依然としてその名を身近に感じる方は、経営者もしくは経理担当者だけではないでしょうか。私も前職が監査法人でしたので、名刺交換する際に相手にポカンとされたことは茶飯事でした。

 一言でいうと、会社が作成した1年間の業績を表す決算書が、全体的に不正や誤りがないかを確認する作業をします。ここで「全体的に」と曖昧な表現にしているのは、監査では、重要度の高い項目に絞って不正や誤りがないか確認しているに過ぎないためです。

 というのも、1年間の膨大な取引について、たった数週間程度の監査で全ての資料をチェックして確認するには限界があるためです。通常は大きな取引を見ることに集中し、細かい部分に関してはサンプルでチェックするに留まります。イメージとしては以下のようになります。

 (2)の部分で何か計算ミスや不正があったとしても、監査では判明が難しいことになります。

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著者紹介
尾崎 士朗 (おざき しろう) 公認会計士

SCS Global Consulting (Vietnam) Co., Ltd.  ホーチミン代表

神奈川県鎌倉市出身。大学卒業後、KPMG Japanに入社。
2014年よりSCS Global Vietnamに参画し、主に日系企業の会計、税務、監査に関するサービスを提供している。プライベートでは学生時代にやっていたバスケットボールを続けており、ホーチミン市バスケチームにも所属している。

ベトナムの会計事情
その他の記事はこちら>
[2015年10月10日 ベトジョーコラム A]
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