こんにちは、青年海外協力隊の山田邦永(やまだくにはる)です。2017年10月より、ベトナムの非政府組織(NGO)、 VIRI で、ハノイを拠点に 活動 しています。
コラム第3回では、現在進行中の ゲアン省 ナムダン県でのプロジェクトについて紹介します。福島県二本松市の「 菓子処まつもと 」の職人、松本克久さんとの協働プロジェクトで、必要となる資金の一部を クラウドファンディングで調達 しながら、収入向上を目指して新しいお土産を開発しています。
ベトナムの中でも貧しいゲアン省、UNESCO無形文化遺産「ビーザム」
ベトナムには全部で63の市・省があります。ゲアン省はベトナム北中部に位置し、海岸平野部からラオス国境山岳地帯に広がり、省都はビン市です。2014年のゲアン省の1人あたりの月平均収入は約7600円と、国平均の約13000円や北中及び中部沿岸地域の約9500円を下回っており、ベトナムの中でも最も貧しい省の1つです。
出典: General Statistics Office of Viet Nam
ゲアン省に代々伝わる伝統的な民謡「 ビーザム 」は、2014年、UNESCOの無形文化遺産に登録されています。ビーザムでは、両親への敬意、勤勉さ、誠実さ等、美徳とされることが、ゲアン省の方言により綴られています。ゲアン省民はビーザムを子守唄として歌い、また、船を漕ぎ、織り物をし、農作業をする際など、日常生活とともに歌っており、満たされた気持ちで日々の生活を送る上で重要な役割を果たしています。
葛(くず)の生産地、ホーチミン氏の故郷のゲアン省ナムダン県
ゲアン省ナムダン県は、省都ビン市から西へ15kmに位置し、ベトナム建国の父、ホーチミン氏の生家があることで有名です。ナムダン県は、やせた土地、台風・洪水被害などの厳しい自然条件や、道路の整備不足による経済の閉塞などにより、地域住民の所得は特に低く、住民の多くは極めて厳しい生活を強いられています。
ナムダン県のナムアイン村生活共同体では、現地で採れる葛(くず)の根から、葛の粉を製品として生産しています。多くのベトナム人は、暑さの厳しいベトナムにおいて、 体にこもった熱を逃がすために葛粉ジュースを飲んでいます 。共同体メンバーは、ナムダン県の葛を使った製品を生み出すことに誇りを持っており、葛の粉を使ったナムダン県を代表するような新しいお土産を開発しようと、意欲に溢れています。
この意欲を後押しすべく立ち上がったのが、福島県二本松市の「 菓子処まつもと 」の職人、松本克久さんです!
福島県二本松市の菓子職人との協働
二本松市には、JICA青年海外協力隊の派遣前訓練の行われる施設があります。松本さんには2017年8月、本訓練所にて協力隊訓練生を対象に、任地で入手しやすい原材料を使った和菓子作り講座を実施いただき、私も本講座に参加いたしました。
私はベトナムで活動する中でゲアン省ナムダン県における収入向上の必要性を感じ、葛の粉を使ったお菓子のお土産の開発の可能性を松本さんと相談しました。松本さんに複数のレシピの試作をしていただき、議論を重ねた末に、クッキーをお土産として開発するべく協働が実現しました。小麦粉を一切使っておらずグルテンフリーであることから、ベトナム人だけでなく、様々な国から来た健康志向のベトナム在住者にも喜ばれるであろうと期待されます。クッキーを焼成するためのオーブン購入費用等、必要な費用の一部を クラウドファンディングで資金調達 しています(クラウドファンディング支援終了日時:日本時間2018年9月9日23:00)。
青年海外協力隊の活動の進め方の選択肢の1つ
ゲアン省ナムダン県における本取り組みでは、青年海外協力隊の私がベトナム国内での物資調達や生産者とのコミュニケーションを進めながら、菓子職人の松本さんはレシピ開発や技術指導に注力をするという、効果的な協働体制が確立されています。異なる得意分野を持つ者同士が協働し、発展途上国の現地のニーズを満たすプロジェクトを企画し、必要資金をクラウドファンディングを通して多くの方々から募るというこの体制の在り方は、フットワーク軽く草の根レベルで活動する青年海外協力隊が活動を進める手段の1つとなり得るのではないかと考えています。