こんにちは、福崎雄生(ふくざきゆうき)と申します。今回はコラム最終回になるので、2020年3月まで所属していた障がい者の雇用創出・自立支援を手掛けるIT企業IT企業Enablecode での業務を通じて得た学びや気づきについて書いてみたいと思います。
Enablecode は障がい者の方々と雇用契約やフリーランス契約を結び、仕事を通じた収入獲得・社会での活躍による自信醸成によって、経済的・精神的な自立のためのきっかけ提供を行っています。
事業内容については、過去のコラム で触れておりますので、お読みいただけると幸いです。
Enablecodeの活動を通じて得た学び・気づき
ベトナムでの活動では、多くの学び・気づきを得ることができました。今回は、その中から3つに絞ってご紹介したいと思います。
ソーシャルビジネスの可能性とシビアさ
第一回目のコラム で触れたのですが、もともとソーシャルビジネス*に携わってみたいという思いがあり、幸運にも社会的企業であるEnablecodeで働くご縁に恵まれました。
ソーシャルビジネスとは社会問題解決を目的とした事業で、その領域は貧困や差別、環境問題など、多岐にわたります。最大の特徴は、寄付金などの外部資金に頼らず自社で事業収益を上げることで継続的な社会支援を可能にしている点です。
日本で地方創生に関わる仕事をしていた際に、社会課題・地域課題の解決に向けて様々な事業・取り組みがあることを知りました。同時に、それらの多くは寄付や外部資金(主に補助金など)によって成り立っており、寄付・外部資金が途絶えると継続が困難になることが課題であることを知りました。
社会課題は根が深く、その解決には地道な取り組みの継続が重要であることから、社会支援と収益獲得を両輪で回しながら、継続的に社会にインパクトを生み出すソーシャルビジネスが近年一層注目を集めています。そして、Enablecodeで手掛けるソーシャルビジネスを通じて、その可能性を実感することができました。
特に、Enablecodeの BPO事業 では、ビジネスが拡大するほど、収入を得て自立できる障がい者の方々が増えていくことを目の当たりにして、社会的な価値と、経済的な価値を同時に生み出すことが可能であることを身をもって感じることができました。
一方で、ビジネスであるがゆえのシビアさに戸惑うこともありました。
Enablecodeでは既定の仕事がこなせない障がい者の方には、仕事を依頼すること(≒手を差し伸べること)ができません。この点が慈善活動とは異なる点で、事業収益で成り立つ企業という特性上仕方ないことだと思うのですが(※どちらが良い悪いという話でもなく)、当初は、「支援できる人を選んでいる」「支援できる人が限られている」ような気がして戸惑いを覚えました。しかし、様々な慈善団体やNPOの方々と接する中で、最終的にそれでもよいのだと腑に落ちました。
例えば、重度の障がい者の生活支援など、世の中にはどうしても寄付・外部資金に頼らなければ成り立たない活動があることも知ったのですが、そういった取り組みに限りある寄付・外部資金を充てられる状況を目指していくことが重要だと考えられるようになりました。
つまり、同じ障がい者支援という取り組みであっても、できる限り広い範囲で寄付・外部資金に頼らなくてもよいソーシャルビジネスとして持続可能な運営を目指し、資金的な援助が真に必要な取り組みに寄付・外部資金が回る状態が理想的だと捉えました。
Enablecodeの取り組みだけに焦点を絞らず、よりマクロな視点に立ち、同じ社会課題の解決に向けて多様な団体が活動していることを考えると、各団体が最善を尽くしつつ団体同士で手を取りながら、一人でも多くの障がい者支援に繋げることが重要だと考えています。
Enablecodeの代表も「社会課題解決にはエコシステムの構築が重要である」といつも言っており、実際に関連団体との連携も積極的に推進していました。私もそういった取り組みに関わる中で、実際に多種多様な団体が存在し、有機的に連携していることを知りました。
少し余談になりますが、NPOとの連携を広げる活動の中で、「ベトちゃんドクちゃん」で知られているグエン・ドク氏とご一緒する機会にも恵まれ貴重な経験となりました。
自立支援のさじ加減(相手への寄り添い)の難しさ
Enablecodeでは障がい者の方々に、仕事を通じた自信の積み重ねにより、精神的にも自立して頂くことも重視していました。Enablecodeの代表は「過度な支援は本人の成長機会を奪うことになる。一方で、必要な支援ができないと仕事が進捗せず逆に自信喪失に繋がることもあるため、適度なバランスでサポートすることが肝要だ」と言っていました。
私自身、現地での活動を通じて、障がい者という集団として考えるのではなく、一人ひとりの置かれた状況や考え方に配慮し、支援する側・それを受ける側が同じ目線に立つことが何より大切だと感じました。実際に、障がい者支援施設や個人のご自宅を訪問し、会話を積み重ねることで相互理解を図りながら、業務をフォローすることを心がけました。相手の方が少しずつできることが増えて喜んでいる姿をみると、私もとても嬉しい気持ちになりました。
上記で触れたことは突き詰めると「相手のことを考えて行動する」ということだと思います。そんなことは子どもの頃に教わる人として当たり前のことなのですが、改めて日常を思い返してみると、実際にはそれができていないこともままあるなと感じたことを覚えています。当時の私にとっての非日常に触れることで改めて内省することができ、相手への配慮・寄り添いを大切にしたいと一層強く思うきっかけとなりました。
障がい者雇用がもたらす可能性
日本での地方創生業務を通じて、地域や地元企業の成長を阻む根本的な原因は慢性的な人手不足であると感じました。人口構造として少子高齢化が加速する中、その数少ない若者たちが大学や就職口を求めて県外に出るため、労働力人口の減少に歯止めがかからないのが大きな課題だと理解しています。
私自身がIT企業で業務経験を積んできたこともあり、Enablecodeで働く前までは人手不足・労働力不足の解消はIT・ロボット活用による業務自動化・省人化するしかないだろうと思い込んでいました。
しかし、Enablecodeでの活動を通じて、社会側に障壁があるがゆえに働きたくても働けない人が多くいることを知り、何よりそういった障がい者の方々が社会で活躍しはじめる瞬間にたくさん立ち会うことができたことで考え方が変わりました
もちろんIT・ロボットの活用は労働力不足を補う効果的な手段ですが、そもそもの労働力人口を増やすということにもまだまだ打ち手があり、その一つが、障がい者雇用の創出だと確信することができました。
日本国内でも、政府中心に障がい者雇用創出に向けて様々な取り組みが進められていますが、まだまだ課題が多く残っています。社会側にある障害を取り除き、一人ひとりが活躍できる環境を整えることで、労働力不足を補うことができたらそれほど素晴らしいことはないと思います。遠くない未来に、私もそういった取り組みに寄与できるようになりたいと考えるようになりました。
今後の自身の取り組みについて
冒頭お話した通り、コロナが流行り始めた2020年4月時点で帰国しEnablecodeを離れているのですが、帰国後もプロボノとして国内NPOでの活動を通じて障がい者雇用に関与させて頂いていました(自身の転職を機に、その活動も現在は離れてしまっているのですが)。
私自身、地方出身ということもあり地方の活性化に関心があり、いわゆる地方創生には地域産業を盛り上げることが不可欠だと理解しています。その上で、労働力人口の減少は避けては通れない課題であるため、その解消に向けて障がい者の方々の活躍の場(就労機会)を増やすというアプローチで僅かにでも貢献していけるようになりたいなと考えております。
最後になりますが、Enablecodeでは貴重な経験を積むことができ、多くの気づき・学びを与えて頂きました。これらの学びや気づきを今後の活動に繋げていくことが、お世話になった方々への恩返しになると信じて行動していきたいと思います。
Enablecodeのメンバへの感謝の意も込めて、帰国前に撮影した写真を載せたいと思います。
「ベトナムにおける障がい者雇用創出の世界に飛び込んでみて 」を最後までお読みいただきありがとうございました!!