7月に施行される新規定をまとめて紹介する。
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1.改正個人所得税法:控除額拡大・金地金譲渡に課税など
改正個人所得税法(7月1日施行)では、給与・賃金所得に対する累進課税を、現行の5%刻みの7段階(5~35%)から5~10%刻みの5段階(5~35%)に簡素化し、各段階の所得区分も拡大する。
給与・賃金所得の基礎控除額および扶養控除額について、基礎控除額は月1550万VND(約9万5000円)、扶養控除額は扶養家族1人につき620万VND(約3万8000円)となる。
同法ではまた、金地金の譲渡所得に対する課税を導入し、譲渡額に対して0.1%の税率で課税することを規定している。ただし、7月1日の施行時点では適用を開始せず、課税の開始時期や税率の調整については、政府が金市場管理のロードマップに沿って決定する。
2.改正税務管理法:課税方式を定額から売上ベースに
改正税務管理法(7月1日施行)では、適用対象を拡大し、ベトナムで活動する組織や世帯・個人の事業者だけでなく、電子商取引(eコマース=EC)やデジタルプラットフォームで事業活動を行う海外の組織・個人も対象に含む。また、プラットフォームが出品者に代わって税の源泉徴収・申告・納付を行う義務を負う。
税務違反の行政処分について、申告漏れの程度に応じて10~20%の罰金、脱税の場合は脱税額の1~3倍に相当する罰金を科す。刑事罰に該当する場合は、刑事法に従い処分される。
3.改正民間航空法:輸送の遅延・欠航に対する航空会社の責任
改正民間航空法(7月1日施行)では、輸送の遅延・欠航に対する航空会社の責任について新たに規定している。これにより、航空会社は乗客に対し、運航便に関する情報を適時に通知する義務を負う。
乗客が当該便の座席をすでに確保しているにもかかわらず、輸送の遅延・欠航、または輸送拒否が発生し、かつその理由が乗客側にない場合、航空会社は、◇速やかな通知、◇乗客への謝罪、◇待機時間に応じた食事・休憩・移動の確保を行わなければならない。
航空会社側の過失により、座席を確保済みの乗客が遅延・欠航・輸送拒否の影響を受けた場合、航空会社は乗客に適切な代替旅程を手配するか、乗客の要望に応じて手数料などを徴収せずに未使用区間の航空券代金を全額返金し、補償金を支払う義務などを負う。
4.首都法改正:ハノイ市の権限拡大
改正首都法(7月1日施行)により、ハノイ市に政策の策定や実行に関する主導的な役割が与えられる。同市人民評議会は、人口密度や環境、都市開発問題に対処するため、都市の改修や再開発に関する政策決定権を持つ。また、関連機関との協議を経た上で、大規模プロジェクトに対して特別な政策を適用する権限も付与される。
さらに、同市人民委員会主席は、同市が管理する公立大学や公立短期大学の設立、統合、解散、名称変更を決定する権限を持つほか、私立大学や外資系大学の設立などについても許可することが可能となる。
5.改正報道法、報道における禁止事項を拡大
改正報道法(7月1日施行)では、報道における禁止事項の範囲が拡大され、差別や偏見を助長する行為が新たに追加された。
禁止コンテンツの例として、◇ベトナムの威信や国際的なイメージを損なうもの、◇対外関係や国際協力に損害を与えるもの、◇民族分裂の助長、民族・指導者・英雄の侮辱、歴史の歪曲、反体制に該当するもの、◇性別による差別・憎悪を扇動するもの、◇障害者や弱者への差別に該当するもの、◇宗教差別や信仰への侮辱に該当するもの、◇宗教者と非宗教者の分断を扇動するものなどが挙げられる。
また、報道機関は、虚偽情報、個人・組織の名誉や人格を毀損する内容、暴力を扇動する情報、社会に不安を与える情報を発信してはならない。わいせつ行為や犯罪行為の詳細な描写も禁止される。読者などに悪影響を与える恐れのある暴力的・退廃的な内容や社会倫理に反する描写の掲載も禁止される。
同法ではさらに、言語表現に関する規定が初めて整備された。報道機関は、ベトナム語を歪め、内容の誤解を招くような言語を使用してはならないと規定される。
6.人口法:第2子出産で産休延長・社会住宅優先
人口法(7月1日施行)には、代替出生率(長期的に現在の人口規模を維持できる出生率)の維持を目的とした複数の措置が盛り込まれている。第2子を出産した女性労働者の産休期間を現行の6か月から7か月に延長し、男性労働者には10労働日の休暇を認める。
また、◇極少数民族の女性、◇出生率が低い省・市の女性、◇35歳未満で2人の子どもを持つ女性に対して、経済的支援を実施する。さらに、2人以上の実子を持つ者は、社会住宅を優先的に購入・賃貸できる。
なお、胎児の性別選択を厳格に禁止し、違反した医療従事者には業務停止の措置を講じる。統計機関は毎年、男女出生比の状況を公表し、政府および省レベルの当局による介入策策定の基礎資料とする。
7.サイバーセキュリティ法:国家機密・個人情報の保護や犯罪対策を強化
サイバーセキュリティ法(7月1日施行)は、2015年のサイバー情報安全法と2018年のサイバーセキュリティ法を統合したもので、「国連サイバー犯罪条約(ハノイ条約)」を含む国際的なサイバー犯罪対策の枠組みも内包する。同法によると、サービスを提供する企業は利用者のIPアドレスを識別し、必要に応じて公安省と国防省の専門部隊に提供する義務を負うことになる。
禁止行為の例として、◇虚偽情報・誹謗中傷の投稿・拡散による個人・組織の名誉や権益の侵害、◇経済・金融・証券・商取引・EC・マルチ商法などに関する虚偽情報の流布、◇国家機密、営業秘密、企業秘密、個人情報、家族情報の取得・売買・漏洩、◇オンライン会話の不正な盗聴・録音・録画、◇出所不明な民生暗号化製品の使用・取引、◇人工知能(AI)や新技術による画像・映像・音声の違法な生成などが挙げられる。
また、同法および関連政令では、16歳未満の子どもがSNSなどのオンラインサービスを利用する際、保護者によるアカウント登録および監視が義務付けられる。これにより、サイバー空間での子どもの権利保護に対する家族の責任が明確化されると同時に、通信事業者やインターネットサービスプロバイダーなどのテクノロジー企業に対しても、子どもに有害なコンテンツの遮断や削除を行う技術システムの構築が義務付けられる。
8.治安・秩序に関する10本の法律の一部を改正・補足する法律:チャイルドシートの使用義務
治安・秩序に関する10本の法律の一部を改正・補足する法律(7月1日施行)では、10歳未満かつ身長1.35m未満の子どもを自動車に同乗させる場合は、運転者と同じ座席列に子どもを座らせてはならない(座席が1列のみの車を除く)。
また、10歳未満かつ身長1.35m未満の子どもを自動車に同乗させる場合はチャイルドシートを使用しなければならないが、従来の規定と比べると、旅客輸送用の自動車については適用対象から除外されることが明確に規定されている。
9.汚職防止法の一部を改正・補足する法律:申告対象となる資産・所得の範囲を拡大
汚職防止法の一部を改正・補足する法律(7月1日施行)では、幹部・公務員・職員の資産・所得の変動を管理するための明確な規定を設けている。資産・所得管理機関は、申告書の情報だけでなく、その他の情報源を分析・評価した上で、申告義務者の資産・所得の変動を追跡する。
年間10億VND(約610万円)以上の資産・所得の増減が確認されたにもかかわらず、申告義務者が申告しなかった場合、同機関は関連情報の提出・補足を求める。資産・所得が増加した場合は、申告義務者はその増加分の出所について説明しなければならない。さらに、資産・所得の増加に関する申告・説明を、申告義務者の幹部・公務員・職員としての業務達成度の評価・格付け基準に含むことも規定されている。
申告対象となる資産・所得の範囲も拡大する。申告義務のある資産・所得には、◇土地使用権、住宅、建築物、およびこれらに付随するその他の資産、◇貴金属・宝石、現金、有価証券、その他1点あたり1億5000万VND(約92万円)以上の資産、◇海外の資産・口座、◇2回の申告の間に得た総所得が含まれる。
10.政府決議第66.17号:条件付き事業分野を142業種に削減
投資法に規定されている条件付き事業分野の削減に関する政府決議第66.17号/2026/NQ-CPにより、条件付き事業分野は従来の198業種から142業種へと削減される。同決議の有効期間は2026年7月1日から2027年2月28日までとなる。
今回の削減は、国防や国家安全、社会秩序や道徳、公衆衛生の観点から真に必要でない分野や、事後検査による管理が可能な分野を対象としている。また、条件が不明確で類似性が高い分野なども含まれる。
同決議で規定された142の業種には、証券、保険、金、石油・ガソリン、航空輸送、不動産、通信、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、医療、教育、弁護士、公証などが含まれる。
11.政令第161号:公務員の基礎賃金を+8.1%引き上げ
公務員や武装部隊の基礎賃金および賞与制度に関する政令第161号/2026/ND-CP(7月1日施行)により、公務員などの基礎賃金が従来の月額234万VND(約1万4400円)から+8.1%増の月額253万VND(約1万5500円)に引き上げられる。この基礎賃金は、給与や手当の計算に用いられる基準となる。実際の給与は、基礎賃金に係数を掛けて計算される。係数は公務員のレベルによって異なる。
公務員などの基礎賃金の引き上げは、待遇改善にとどまらず、企業各社や、ベトナムで働く日本人駐在員を含む労働者の一部にも実質的なコスト増という形で大きなインパクトをもたらす可能性がある。その最大の要因は、社会保険料の算定上限額を「基礎賃金の20倍」とする「20倍ルール」の存在だ。社会保険料の算定上限は、基礎賃金の20倍となり、給与がこの上限を超えると、実際の給与額にかかわらず、この上限額を基に社会保険料を計算する。
12.政令第162号:年金・社会保険手当を+8.0%引き上げ
年金や社会保険手当の調整に関する政令第162号/2026/ND-CP(7月1日施行)では、年金や社会保険手当を+8.0%引き上げると規定している。これにより、約340万人が恩恵を受け、追加予算は10兆7730億VND(約660億円)となる。
13.政令第164号:公職者のデジタル資産も申告対象に
機関や組織における職務・権限を有する者の資産・所得の管理に関する政令第164号/2026/ND-CP(7月1日施行)によると、1億5000万VND(約92万円)以上のデジタル資産を所有する場合、資産・所得の申告義務が生じる。
同政令により、申告義務者本人だけでなく、配偶者および未成年の子どもの資産も申告対象となる。土地使用権、住宅などの不動産に加え、1億5000万VND以上の金などの貴金属、現金・預金、株式・債券、海外の資産などが対象だ。さらに、デジタル資産やオークション資産、知的財産権、美術品なども、1種類あたりの価値が1億5000万VND以上であれば申告しなければならない。
14.政令第168号:35歳までに第2子出産の女性に支援金支給
人口法の施行細則を定める政令第168号/2026/ND-CP(7月1日施行)では、第2子出産時の産休制度の条件や手続き、特定の条件を満たす女性が出産した際の財政支援、出生前および新生児のスクリーニング検査への支援について規定している。
同政令によると、以下のいずれかに該当する女性が出産した場合、最低200万VND(約1万2300円)の財政支援を受けられる。対象となるのは、◇極少数民族の女性、◇代替出生率(長期的に現在の人口規模を維持できる出生率)を下回る省・市に居住する女性、◇35歳までに2人の子どもを出産した女性の3つのケースだ。
妊婦を対象とする出生前スクリーニング検査では、胎児の、◇ダウン症候群(21トリソミー)、◇エドワーズ症候群(18トリソミー)、◇パトウ症候群(13トリソミー)、◇サラセミア(先天性溶血性貧血)の4疾患の検査に対する支援が規定されている。
また、新生児を対象とするスクリーニング検査では、◇先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)、◇G6PD欠損症、◇先天性副腎過形成症、◇先天性難聴、◇重症先天性心疾患の5疾患の検査に対する支援も規定された。支援額の上限は、出生前検査が90万VND(約5500円)、新生児検査が60万VND(約3700円)となる。
なお、このほか、◇建設法、◇電子商取引法、◇デジタル変革法、◇ハイテク法、◇疾病予防法、◇国家準備法、◇拘留・勾留・居住地制限措置に関する法律、◇麻薬防止法、◇刑事判決執行法、◇民事判決執行法、◇緊急事態法、◇司法履歴法、◇節約・浪費防止法、◇民事司法共助法、◇刑事司法共助法、◇引き渡し法、◇受刑者移送法なども7月に施行される。



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免責事項
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