南中部沿岸地方カインホア省ニンホア町ニンホア村にある貧しい村落には、学校で音楽を学んでいないにも関わらず、文字も読めなかった頃からギターやキーボードを弾き、ドラムを演奏できる天賦の才を持った2人の兄弟がいる。
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貧相な体格の兄弟は、病気の両親に薬を買うため、昼間は学校に通い、夜はキーボードとドラムを携えて喫茶店やパーティー会場、結婚式場などで音楽を演奏し、お金を稼いでいる。兄のフイン・フォン・バオ君(11歳)と弟のフイン・ダイ・フォン君(8歳)だ。
兄弟の家は、村の舗装されていない道の終わりにあり、遠くから見るとわびしい赤レンガが目に入る。この貧しい村落に住む農家は、1年中田畑を耕すしかなく、毎日食事にすら困っているため、子供に音楽を学ばせることなど大そうな贅沢だった。
兄弟の母のファム・ティ・ゴック・チャウさんも、どうして2人の子供がこんなに早く音楽を演奏できるようになったのかわからないという。チャウさんは、「私たち夫婦は幼い頃から学校に通っていなかったので、大人になっても音楽を演奏したり歌を歌ったりするどころか、文字の読み書きもまともにできません」と話す。
しかし、両親とは逆に2人の子供は幼い頃からテレビ番組の音楽を聴くことが好きで、音楽に夢中だった。「2人は水牛の放牧から帰ると、鍋の蓋やペットボトル、茶わんなど家中のものを集めて、コンコンと叩き始めるんです。叩いてみて面白い音がするものや、音楽性のあるものであれば、外の廃棄物すら拾ってきて楽器にするんですよ」とチャウさんは笑顔で語る。