新型コロナ禍、しめやかに死者を送り出す人々

2021/10/17 08:44 ICT配信

――――――――――

イメージ写真
イメージ写真

 「おじいちゃん、どうして私たちを置いて行っちゃったの?」5区フンブオン通りにある古いマンションの2階から、泣き叫ぶ声が聞こえてくる。4世代の大家族がぎゅうぎゅうと入り口の前に集まり、ボランティアチームが遺体を引き取りにくるのを待っていた。

 故人は60歳の男性で、基礎疾患があった。遺族は狭い廊下の両側に寄り、ボランティアチームの6人が通れるように道をあけた。チームのメンバーは遺体の前に立ち、手続きと袋への収納の作業の前に死に装束を着せた。現場では遺体を包む袋がこすれる音と、遺族がすすり泣く声が混ざり合っていた。

 そのマンションは一時的に封鎖措置が講じられていたため、遺族はボランティアチームに、できるだけ早く故人を引き取るよう依頼していた。部屋の広さは30m2ほどだが、ここに4世代が一緒に暮らしている。部屋の外の階段に通じる窓から、目を赤くした人々が作業の様子を静かに見下ろしていた。

 「故人の遺骨は5区軍事指導部がご遺族にお返しししますので、安心してください。大家族ですので、明日皆さんで新型コロナウイルス検査をしてくださいね」と、ボランティアチームの1人が声をかけ、遺族を励ました。

 20人余りいる大家族全員が、故人を最後まで見送りたいと申し出た。故人の遺体を運ぶ行列が、古いマンションの急で暗い階段をゆっくりと降りていく。

 故人を乗せた車のドアが閉まると、一家はひざまずき、3回お辞儀をした。通りには泣き叫ぶ声が響き渡った。ボランティアチームが到着してから去っていくまでの時間はわずか15分。フンブオン通りを走り去っていく車の後ろを、目を濡らした人たちが見つめていた。

――――――――――

 夫の遺骨を手に抱き、ランさんはまだ現実を受け入れられていない様子だった。遺骨を納める寺までの道すがら、時々黙り込み、また時々子供のように泣いた。「車椅子には座らずに、どうしてこんなところにいるの?」とランさんは遺骨の箱に貼られた「N.V.T」という名前の小さな紙をなでながら言った。

前へ   1   2   3   4   次へ
© Viet-jo.com 2002-2026 All Rights Reserved 利用規約 免責事項

この記事の関連ニュース

 ホーチミン市警察は22日、ビンフンホア火葬センターの職員らが新型コロナウイルスのパンデミック時に、...
 新型コロナ国内第4波の震源地となったホーチミン市。既に流行はピークアウトして、市内の新規感染者は...
 ホーチミン市軍事司令部は19日に開いた会合で、4月末から広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)...

新着ニュース一覧

 レ・ミン・フン首相は8日と9日、ラオスのサルムサイ・コンマシット首相の招きに応じ、同国の首都ビエン...
 日本の格付け会社である株式会社格付投資情報センター(R&I、東京都千代田区)は8日、ベトナムの外貨建て...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ベトナム国家銀行(中央銀行)は、銀行業界における人工知能(AI)の活用に関する安全管理やリスク管理、導...
 生まれつき両手足がないホアイ・トゥオンさん(女性・2008年生まれ)は、左右の上腕を使って自力で文字の...
 国内最大手の格安航空会社(LCC)ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は12
 都市環境事業や交通・標識事業、景観事業などを手掛ける積水樹脂株式会社(大阪府大阪市)は、韓国とベト...
 農業関連技術を手掛けるアグリウェーブ株式会社(東京都千代田区)と土壌改善剤や炭化装置のトレーディン...
 パナソニック株式会社(大阪府門真市)は、ベトナムとフィリピンで使用済みエアコンの回収および再生・再...
 ハノイ市人民裁判所は7日、中央精神法医研究所(ハノイ市)で起きた大規模な汚職事件の第一審で、収賄罪...
 財政省傘下統計局(NSO)の速報値によると、2026年9月の完成車(CBU)輸入台数は前年同月比+59.5%増の2万7...
 最高人民裁判所ハノイ控訴裁判所は7日、第2バックマイ病院および第2ベトドク(越独)友好病院の建設事業...
 ホンダベトナム(HVN)は、タイからの輸入車として7月から販売していた新型電動バイク「UC3」について、...
 総合福祉企業の株式会社ケア21(大阪府大阪市)は7日、ハノイ市の高齢者ケア・医療複合施設で、日本式の...
 花王株式会社(東京都中央区)のベトナム現地法人である花王ベトナム(KAO VIETNAM)はホーチミン市で7日、...
トップページに戻る