ベトナム映画「第三夫人と髪飾り」アッシュ・メイフェア監督が訪日、舞台挨拶に登壇

2019/09/07 06:00 JST配信

 日本で10月に公開されるベトナム映画「第三夫人と髪飾り(越題:Vo Ba、英題:The Third Wife)」のアッシュ・メイフェア(Ash Mayfair)監督が日本公開を前に訪日し、5日に東京・日比谷図書文化館で行われた舞台挨拶に登壇した。

© copyright Mayfair Pictures.
© copyright Mayfair Pictures.

 舞台挨拶には、メイフェア監督とともに「スカトロジー・フルーツ」や「心が疲れたときに観る映画」などの著書で知られる文筆家の五所純子氏が登壇。クロストークの形で、劇中の映像表現や家制度、美術監修に参加しているトラン・アン・ユン(Tran Anh Hung)氏との制作秘話、ベトナムでの上映中止、次世代に伝えたいことなどが語られた。

 五所氏は冒頭で、劇中の水や血、花などの映像表現について「あらゆる事物的なモチーフが作る映像詩によってストーリーを進めることで、人物たちの微細な感情を表現しているように感じました」と言及。メイフェア監督は、「もともと脚本にはシンボルとして水を使うというのはなかったのですが、実際のロケーションに行ったときに、土地や山、川そのものが自分を贈り物として差し出してくれているような気がしたんです。それによって、色々な事物が隠喩として成立することになりました」と説明した。

 また五所氏は、複数の女性がテーマとなる作品では競争やいがみ合いの関係が描かれがちである一方で、「第三夫人と髪飾り」では女性たちはいがみ合わず、自身の打算や野心を最低限に抑えて描いていると指摘。これについて監督は「曾祖母は14歳で結婚させられ、相手、つまり曾祖父には何人も奥さんがいました。他の奥さんたちがいて競争ややきもちはなかったの?と曾祖母に聞くと、『忙しすぎたから』と答えました。生活自体が大変で、お互いに助け合わないとやっていけなかったから、と。競争がないことはなかったけれど、最終的には社会における女性に対する圧力が強かったので、姉妹のような形で複数の妻たちが絆を築いていくしかなかった、と聞いて驚きました」と語った。

 トラン・アン・ユン氏との制作秘話についてメイフェア監督は、監督として決断をするときに『何が真実なのか、何が美なのか』という2つのことを自分に問いかけ続けなさい、と教えられたと述べた上で、「まだ答えがないのですが、アドバイスをいただいたことで、将来自分が作っていくであろう映画について、真実の瞬間や美の瞬間を自分が見つけることができるのだろうかと楽しみになってきているんです」とコメントした。

 また、ベトナムでは公開からわずか4日で上映中止となった件については、ベトナム国内で上映すれば保守的な人たちから攻撃されるだろうと予期していたとしながらも、祖父母に見せたかったこと、またベトナム国内のアーティスト、特に若い女性のアーティストたちに自分の語りたいことを語ってよいのだということを見せたかったことから、ベトナム国内で上映することを選んだ、と語った。

 同作品はメイフェア監督の長編デビュー作。初監督作とは思えないその確かな演出手腕が評価され、数々の映画賞に輝いている。「青いパパイヤの香り」や「夏至」などを手掛けたトラン・アン・ユン氏が美術監修を務め、「ブラック・クランズマン」などのスパイク・リー(Spike Lee)氏が資金援助するなど、巨匠たちのバックアップを得て作られた。

 メイフェア監督の曾祖母の実話をもとに、世界複合遺産にも登録されたベトナム北部の秘境・紅河デルタ地方ニンビン省チャンアンを舞台に、絹の里の富豪の第三夫人として14歳で嫁いでくる主人公メイと、彼女を取り巻く愛憎、悲しみ、希望を、美しく官能的に描いた作品だ。

 「第三夫人と髪飾り」は、10月11日(金)より東京のBunkamuraル・シネマほかで全国順次ロードショー(R15+指定)。

【あらすじ】

19世紀のベトナム北部。14歳のメイはその地を治める富豪のもとに、三番目の妻として嫁いでくる。一族が暮らす大邸宅には、唯一の息子を産んだ穏やかな第一夫人、3人の娘を持つ美しく魅惑的な第二夫人がいた。まだ無邪気だったメイは、この家では世継ぎとなる男の子を産んでこそ奥様になれることを知る。そして妊娠。出産に向けて季節が流れる中、第一夫人も妊娠していることが発覚。時を同じくしてメイは、第一夫人のひとり息子ソンと、第二夫人のある秘密を知ってしまう―――。

【予告編】

(※本記事はVIETJOベトナムニュースとベトナムエンタメ情報サイト「A-TIM’s」の合同取材によるものです。)

[2019年9月6日 ベトジョーニュース/A-TIM’s A]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 世界の巨匠たちがその才能を絶賛する1985年生まれのベトナム人女性監督、アッシュ・メイフェア(Ash May...
 ベトナム映画「チャン・クイン(原題:Trang Quynh)」が、10月9日(金)から日本で公開される。配給はイオ...
 ベトナム映画「俺たち替玉ブラザーズ!(原題:Sieu Sao Sieu Ngo)」が、9月11日(金)から
 ベトナム映画「第三夫人と髪飾り(越題:Vo Ba、英題:The Third Wife)」のDVDが、6月10日
 ベトナム映画「第三夫人と髪飾り(越題:Vo Ba、英題:The Third Wife)」が11日、東京都渋
(※本記事はVIETJOベトナムニュースとベトナムエンタメ情報サイト「A-TIM’s(エータイムズ)」の合同
 8月7日から17日にかけてスイスのロカルノで開催されている第72回ロカルノ国際映画祭のプログラム「Loca...
 ベトナム映画「第三夫人と髪飾り(越題:Vo Ba、英題:The Third Wife)」が、10月11日(金)

新着ニュース一覧

 ベトナム株式市場は7日の取引で、アジア主要市場の中で最も大きく下落した。VNインデックスは前日比▲43...
 政府は、台風13号(アジア名:カルマエギ、日本では台風25号)で被災地となった南中部地方のクアンガイ省...
 ベトナム国家民間防衛指導委員会は7日朝、6日夜に南中部に上陸した台風13号(アジア名:カルマエギ、日...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 混み合う大学の中庭で、身長110cmのグエン・ティ・フオンさん(女性・23歳)は、まるで小学生が足早に歩...
 ホーチミン市建設局傘下の11区建設投資プロジェクト管理委員会は4日、同市フート街区(旧11区)のフート...
 韓国の食品製造会社であるサムファF&C(Samhwa F&C)はこのほど、自社で展開するフローズンヨーグルトの...
 ベトナムIT最大手のFPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は、ドイツのフラ
 ベトナム航空[HVN](Vietnam Airlines)は6日、独自ブランドの香り「ニャー
 計画投資省海外投資局(FIA)が発表した海外直接投資(FDI)に関するデータによると、2025年1~10月期のFDI...
 ハノイ市人民委員会主席のチャン・シー・タイン氏が5日、党中央執行委員会によって中央監査委員長に選...
 ハノイ市の国家展示センター(VEC)で開催された「秋季フェア」で、トゥアンギア製造組立(Tuan Nghia)が...
 ホーチミン市建設局によると、同市コンダオ特区(コンダオ諸島)で初の電気バス路線が12月初旬に運行を開...
 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は、11月11
 自然エネルギー発電所の発電事業(IPP)などを手掛ける自然電力株式会社(福岡県福岡市)がグループ会社を...
 財政省傘下統計局(NSO)が発表した統計データによると、2025年10月の輸出額(推定値)は前年同月比+17.5%...
トップページに戻る