どこの国でも子宝に恵まれず、不妊治療で苦しんでいる夫婦は存在する。子供を持つための最終手段として、養子縁組や代理出産などの方法があるが、ベトナムでは代理出産は全面的に禁止されている。しかし、新生児売買や代理出産といった違法行為は日常的に行われているという。こうした闇のブローカーに関する情報を得た地元紙の記者が今回、潜入取材を試みた。8日付タインニエン紙(電子版)が報じた。
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潜入した記者は子宝に恵まれない裕福な人妻を装い、代理出産の仲介が行われているというホーチミン市ビンタン区のある民家を訪れ、仲介役の女性2人と接触することに成功した。まずハイと名乗る仲介者が新生児売買を持ちかけてきた。「子供を持つなんて簡単よ。1人1500万ドン(約5万7500円)で手を打つわ。欲しければ何人でも揃えてあげる」彼女はまるで市場で肉や野菜を叩き売るかのようにそう言った。
記者が「夫の血が流れていなければ意味がないわ」と言うと、フーと名乗るもう1人の仲介者が代理出産を勧めてきた。「代理母を雇って病院で妊娠させることも出来るし、ご主人に任せることも出来るけど、どちらがいい?」「どちらでも構わないわ。代理母になってくれる人が健康な人ならそれでいいわ」記者が答えると、仲介者は「病院の周辺に住んでいるプロの代理母は出産回数が多くて、年増も多いからお薦めしないわ。そうね、私が手配してあげる。自慢じゃないけど、こっちのほうが粒ぞろいよ」最後に2人の仲介者はこう付け足した。「あ、ちゃんと契約書も作ってあげるから心配しないで」
数日後、代理母が見つかったとの連絡があり、市内で廃品回収をしているLという25歳の女性を紹介された。提示された代理出産の契約書には、代理母に対する毎月の食費200万ドン(約7700円)とサービス料400万ドン(約1万5400円)を支払うこと。さらに妊娠が確認された時点で、代理母の借金の肩代わりをし、最終的に新生児を受け取った際は、成功報酬として5000万ドン(約19万円)を支払うことが明記されていた。
また、仲介者である2人の女性にも、それぞれ500万ドン(約1万9200円)ずつを支払い。妊娠中に必要となる医療費なども負担しなければならないので、代理出産の総費用は約1億ドン(約38万円)に上る。
以上がベトナムで日常的に行われている代理出産のあらましだ。そこでは命が金銭でやり取りされていた。