エチオピアのアディスアベバで11月28日から12月2日まで国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産保護条約第11回政府間委員会が開催され、12月1日にベトナムに伝わる伝統信仰「マウタムフー(Mau Tam Phu=母三府、Beliefs in the Mother Goddesses of Three Realms)」の儀礼が人類の無形文化遺産の代表一覧表へ登録された。
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マウタムフーは16世紀に形成された空(天)・川の水・森と山の3人の聖母を崇拝する伝統信仰で、全国各地の土着宗教や仏教を始めとする外来の宗教と融合しながら、儀礼などを通して広く伝承されてきた。
マウタムフーを祀る寺院は全国でみられるが、なかでも紅河デルタ地方ナムディン省には400近く寺院があり信仰の中心地とされている。また、マウタムフーはベトナムで大多数を占めるキン族だけでなく、ムオン族やタイ族を始めとする少数民族にも崇拝されている。
マウタムフーは祈祷師の衣装や音楽、歌、舞、儀礼で行われる憑依などが、ベトナム人の文化が昔のまま現代に残る「生きた博物館」と称されている。
ユネスコによると、マウタムフーはその信仰が民族や宗教を超えてベトナム全土に広がったことで多様性やオリジナリティが生まれ、人々の生活で大きな役割を担ってきた点が評価されたという。また、1990年代には伝承者たちやコミュニティの自主的な寄付による儀礼の維持や、政府による礼祭の保護管理に関する政策が実施されたこともこの度の登録に繋がったとされている。