ベトナム戦争の報道写真「戦争の恐怖」に写る当時9歳の少女だったカナダ国籍のファン・ティ・キム・フックさん(59歳)は6月28日、米国のマイアミ皮膚科・レーザー研究所で最後の皮膚治療を受けた。同研究所では、フックさんの来歴を知って、2015年から無料で治療を行っていた。
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フックさんはベトナム戦争中の1972年6月8日、東南部地方タイニン省チャンバン郡の村を襲ったナパーム弾の爆撃から命からがら逃げ出したが、全身に重度の火傷を負った。
ベトナム系米国人の報道カメラマンのニック・ウット(ベトナム語名:フイン・コン・ウット)さんは、「戦争の恐怖」の撮影直後に負傷した子どもたちをサイゴン(現在のホーチミン市)の病院に連れて行った。医師らは当初、フックさんは助からないと治療を断ったが、ウットさんが報道カメラマンと知ると態度を変えて治療した。
フックさんは1年以上入院し20回近く手術したが、普通に歩けるようになるまでには、それからの10年間に数回の手術を必要とした。肉体的・精神的な苦しみに耐えかねて、自殺を試みたこともあったという。
その後もフックさんとウットさんは連絡を取り合い、家族のような付き合いを続けている。フックさんは、丸裸の写真を発表されたことでウットさんに腹を立てた時期もあったが、50年の時が過ぎた現在は、戦争の恐怖という歴史的な瞬間を記録してくれたことに感謝している。