芸術系の学校や画家のアトリエで絵のモデルを仕事にする人たちがいる。中部フエ市でもそうした学生たちがいるが、この仕事にはそれなりの喜びや悲しみがつきもののようだ。モデルの仕事を選んだ理由はさまざまだが、ほとんどの学生は生活費の足しにするためのアルバイトだ。以前のフエでは、モデルと言えば中高年が多かったが、最近は生活費稼ぎでモデルをする学生が増えている。
モデルの仕事自体はずっと以前からあり、どんな年齢の人でもすることができる。作品が仕上がるまで同じ姿勢でいるだけで特に力は必要なく単純な仕事のように見える。その割に収入は魅力的で、フエで芸術大学のモデルを務めると1回当たり4万~5万ドン(約210~260円)の収入になる。学生にとっては実入りのいい仕事だ。
この仕事に面白みを感じている学生も多い。哲学学科の大学生フンはモデルの仕事をして2年になる。「このバイトは気に入っているよ。時間を有効に使えるし給料もいい。モデルをしながら皆が描いているのを見るのも楽しいし。それにこの仕事のおかげで友達もたくさんできた」
外国語大学の女子学生ハンは「この仕事は少しの忍耐力があれば誰でもできます。最初は緊張していたけど、慣れてくると恥ずかしがりなのも克服できたし、自分に自信が持てるようになりました」と話す。彼女の自慢は画家たちから贈られた絵だ。自分がモデルになったもので、それぞれの絵に自分の異なる一面が描かれていると感じている。同じく外国語大学の女子学生チャンは、モデルの仕事が縁で若い画家と付き合い始めた。彼女はうれしそうに「この仕事が彼と引き合わせてくれたんです」と語る。この仕事を機に自分に自信をつける人は多いようだ。
とはいえ、モデルの仕事はあまり一般的とは言えず、間違った認識を持たれていることも多い。女子学生ハンはこう打ち明ける。「男性のクラスでヌードのモデルをするときもあって、最初はイヤでした。『こんな仕事は売春婦のすることだ…』などと陰口を言う人もいて、女性はこの仕事をしたがりません」。別の女子学生はこう語った。「私とボーイフレンドはそれが原因で別れたの。彼は私が人前に裸をさらすのを受け入れることができなかった」
フエでモデルをするのは周辺各省出身の学生が大半だ。両親とともに住むフエ市内の学生は、親がこの仕事をすることを許さないという。絵のモデルも世の中に必要な職業のひとつ。この仕事に対する理解をもっと深める必要がありそうだ。