ベトナム女性を美しく飾る「アオザイ」、その歴史と変遷

2016/03/13 05:52 JST配信

20世紀後半~現在:ファッションとしてのアオザイ

 1960年代は、サイゴン(現在のホーチミン市)でラグラン袖のアオザイが考案された。ラグラン袖のアオザイは、袖を首から脇まで斜めに縫い合わせ、つなぎ目に沿ってボタンを配する。この形にすることで脇の下のしわを最小限に抑えるほか、布を身体の曲線にぴったりと沿わせながらも腕を快適に動かすことができる。

 これ以降、ベトナムのアオザイはラグラン袖が主流となり、現代のデザインが形作られていった。

 1960年代初頭には、ベトナム共和国(南ベトナム)初代大統領ゴ・ディン・ジエム(Ngo Dinh Diem)の実弟で大統領顧問を務めていたゴ・ディン・ニュー(Ngo Dinh Nhu)の妻、マダム・ニュー(マダム・ヌーまたはマダム・ゴ・ティン・ヌー、本名:チャン・レ・スアン=Tran Le Xuan)が、襟元の大きく開いた丸首やボートネックのデザインのアオザイを考案した。当時は伝統や公序良俗に反するという理由で批判されたが、現在では熱帯気候に適した快適さから人気を集めている。

 1960年代にはさらに、ファッション性が高いとして裾の長い伝統的なアオザイが評価されるようになった。この頃、オープンな考え方を持った都市部の女性たちは、ウエストをタイトに絞ったアオザイを着て身体の曲線を強調するため、ブラジャーを着用するようになった。

 1960年代の終わり頃には、便利さと快適さから上衣の丈の短い「ミニアオザイ」が女子生徒たちの間で流行した。上衣の裾は幅が狭く膝丈で、身頃はウエストが詰まっていないものの身体のラインに沿って縫われていた。

 1970年代以降、生活の大きな変化に伴い、アオザイを街中で見かけることは徐々に減っていった。しかし、2000年からは、ボー・ベト・チュン(Vo Viet Chung)やシー・ホアン(Si Hoang)、トゥアン・ベト(Thuan Viet)といったデザイナーたちが様々なデザインや素材のアオザイコレクションを生み出し、アオザイが再び注目を集めるようになった。最近ではジーンズと合わせるアオザイなども考案されている。

 ミスコンなどの国際的な美の祭典では、ベトナム代表が身につける衣装として常にアオザイが第一候補に挙がる。2014年にはホーチミン市9区に「アオザイ博物館」がオープンし、同市では毎年「アオザイフェスティバル」が開かれるなど、この民族衣装の伝統を守る動きが活発になっている。

最終更新:2019年8月23日 13:20 JST

前へ   1   2   3   次へ
[Thanh Van, Vietnamnet, 08:00 | 28/02/2016, K]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 ベトナム婦人連合会は、3月1日(金)から8日(金)にかけて、「アオザイウィーク2024」を全国的に開催する...
 ホーチミン市アオザイ協会が、同市人民委員会の決定第4764号/QD-UBNDに基づき設立された。同協会は同市...
 ホーチミン市で2日から開催されていた「アオザイフェスティバル2019」が、2週間の会期を終えて17日に閉...
 ホーチミン市1区の歩行者天国グエンフエ(Nguyen Hue)通りで2日、「アオザイフェスティバル2019」が開幕...
 ハノイ市から60kmほど離れた郊外に位置するウンホア郡チャックサー村は、ハノイ市で最も長い歴史を持つ...
 ホーチミン市で3月3日から開催されていた「アオザイフェスティバル2018」が26日に閉幕した。  今年...
 ホーチミン市11区のダムセン文化公園では、3月8日から11日までアオザイを着た来園者の入場券が無料、フ...
 ホーチミン市では、3月3日(土)から25日(日)まで「第5回アオザイフェスティバル」が開催される。これに...

新着ニュース一覧

 ペトロベトナムグループ(Petrovietnam=PVN)と子会社のPVパワー[POW](PV
 ハノイ市で大気汚染が深刻化している中、多くの家庭が健康を守るため空気清浄機を買い求める動きが強ま...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ハノイ市トゥオンティン村人民委員会は現在、地場系コングロマリットのビング
 東南部地方ドンナイ省ディンクアン村のスオイコー地区に面するチアン湖では、カンボジアから帰国した越...
 国際交流基金ベトナム日本文化交流センターは、ハノイ市、北部紅河デルタ地方ハイフォン市、ホーチミン...
 ハノイ市交通管制センターは13日に運用が開始され、人工知能(AI)を搭載した監視カメラシステムによる交...
 国際協力銀行(JBIC、東京都千代田区)が発表した日本の製造業企業の海外事業展開の動向に関するアンケー...
 ベトナムIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は、日本法人のFPTジ
 金属加工や化成品、建設などの事業を手掛ける日創グループ株式会社(福岡県福岡市)は、ベトナムで建築建...
 家庭内暴力の防止や社会秩序の維持に関する行政罰を定めた政令第282号/2025/ND-CP(12月15日施行)では、...
 日本全国に「イオンシネマ」98劇場を運営するイオンエンターテイメント株式会社(東京都港区)は7日、ベ...
 アジア開発銀行(ADB)は10日、最新の「アジア経済見通し」を公表し、ベトナムの経済成長率予想を上方修...
 ホーチミン市トゥードゥック街区で11日、マツダの東南アジア初となる旗艦ショールームがオープンした。...
 国会は10日、環境保護に関する政策・法律の実施効果を高めるための決議を採択し、この中でハノイ市とホ...
トップページに戻る