娘の出生証明書には、母親の欄に「カン」と記載されている。娘を産んだのは、女性から男性に性転換したトランスジェンダーの「父親」であるカンさんだ。
(C) vnexpress |
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南部メコンデルタ地方ドンタップ省出身のカンさん(26歳)は女性から男性に、同カントー市出身の妻のアインさん(23歳)は男性から女性に性転換したカップルで、ベトナムのLGBTコミュニティでトランスジェンダーであることを公表した最初のカップルでもある。
カンさんの出産は、ベトナムで初めてトランスジェンダーの男性が出産した事例だ。子供をもうけることを決意した当時、カンさんは男性ホルモン注射を一時休止し、アインさんも女性ホルモンの投与を注射から服薬に変えて量も減らした。そして、カンさんは4か月後に自然妊娠し、2020年5月16日に体重2.3kgの女の子を普通分娩で出産した。カンさんは今、法的に娘の「父親」になることを渇望している。
「私たちトランスジェンダーは、まるで世の中に取り残されているかのようです」とカンさんは語る。カンさんによると、彼にとって妊娠中は「ひどい」経験だったという。いわゆる女性のようにマタニティの権利を享受できず、子供の誕生に向けて経済的な準備をするため、働き詰めだった。
他の妊婦と同様に、カンさんも赤ちゃんがお腹の中で成長するにつれて内臓が圧迫され、呼吸や睡眠に影響が出た。妊娠32週で切迫早産の兆候が見られたため、入院して黄体ホルモン注射を受けた。他の妊婦と違ったのは、「トランスジェンダーなのに子供を産むのか」、「まだ子宮があって妊娠もできるのにどうしてトランスジェンダーと呼べるのか」など、色々な人からあれこれ言われたことだ。
カンさん夫妻は妊娠前にそれぞれホルモン注射を長期間受けており、特にカンさんは麻酔薬や抗生物質も使っていたため、健康な赤ちゃんが産めないのではないかというプレッシャーにさらされていた。「それでも、私たち夫婦は子供が欲しかったので、命を犠牲にしてでも赤ちゃんを産むと決意したんです」とカンさんは語る。