【第1回】ワクワクする子育てを応援

2018/06/18 12:45 JST配信

初めまして。今月から隔月で、コラムを書かせていただくことになりました。 おおぞら日本人幼稚園 園長の多々内です。私は大学卒業後、約30年間幼稚園教諭をしていました。そして4年前にご縁があって渡越し、ホーチミン市7区に日系の幼稚園を開園いたしました。

思えば、私は小さい頃から近所の赤ちゃんの面倒を見ることが好きで、歩けず、上を向いたまま寝転んでいる赤ちゃんを見ながら、「この子は何を考えているんだろう?」と想像することが好きな子どもでした。小学生の私が、1~2歳児と何をして遊んでいたかは思い出せませんが、その母親が、赤ちゃんのオムツを替えたり、泣くとあやしにきたり、時間になるとミルクをあげたりしていたそうで、お母さん役に憧れていたように思えます。

また、大学の卒論で「子どもたちのごっこ遊び」を研究した際に、子どもたちの遊びの世界に益々興味を魅かれました。子どもは一人ひとりそれぞれ違います。その違いが面白く、一緒に遊んでいると、こちらが驚かされることや、学ぶことに溢れているのです。

小さい子どもたちの「思い」には、半端のない強さを感じます。例えば、幼稚園に初めて登園してくる2歳児。初めてパパやママと別れてバスに乗るときは、我々が人さらい状態です。泣いて抵抗する子どもを無理矢理バスに乗せ、母親へも後ろ髪を引かれないようさっと離れるように促します。

Aくんはバスから降りて門の前から動かなくなりました。「おはよう」と声をかけてもリュックを背負ったままその場に座り込みます。手をとって幼稚園の中に誘い込もうとすると、もう片方の手で、門の鉄柱をギュッと握り、両足は1?たりとも動かさず、「ぜったいに、はいらない」という固い意思を表明。この境界線を越えたら敵にやられると思っているのでしょう。

Bちゃんも毎日泣いてバスから降りて来て、幼稚園の門から中に1歩も入ろうとしません。「ままーー」と泣きじゃくるばかりです。

Cくんも登園後、ずっと泣き続けたまま。なだめるつもりでCくんに、「わかった。お母さんのところに帰ろうか」と声をかけると、下ろしたカバンをまた背負い、持ってきた毛布を手提げに入れて、バスの駐車場まで歩いて行こうとしました。

また、お昼寝になるとそれまでご機嫌だったDちゃんは、突然泣き出して「ぜったいにねない」と言います。目を瞑ったらやはり、敵陣に渡されると思っているようです。D子の強い意思を感じました。

Aくんも、Bちゃんも、Cくんもなんとか幼稚園の中に入れさせようとは思いません。泣きたい気持ちがわかるからです。ただそばにいて泣きたい悲しい気持ちを理解することに努めます。おそらく前々から家庭で、「明日から幼稚園だよ」、「いいなあ、幼稚園」などと言い聞かされていると思いますが、2歳児にとっては、いくらわかっていても、それは突然やって来るのです。わかっているけどママから離れる不安は絶大、「ようちえんってなに?!」状態なのではないでしょうか。泣くエネルギーと、絶対に入らないという確固たる意思を体全部で表現しています。小さな小さな2歳児ですが、ものすごい力で抵抗できるのだと改めて感じされられます。

毎年出会う子どもたちと向き合いながら感じることは、確かに年齢的には幼い子どもたちですが、人間として生まれ持った強い力がすでに存在するということです。「まだ何もわからないだろう」とか、「子どもだから適当にごまかせばいい」などという気持ちを持ってそばにいることは逆に子どもの力を信じていないことになります。

子どもが奥に秘めている力はどんなだろうと探ることだったり、我が子はどんなことに興味を持っていくんだろう、とまだ見えない可能性に想いを馳せると親のワクワクが増していく、それが子育ての醍醐味なのだと思っています。

著者紹介
多々内三恵子
おおぞら日本人幼稚園理事長・園長。

タオディエン日本人幼稚園園長。

静岡大学教育学部附属幼稚園・青山学院幼稚園教諭を経てホーチミンで日系幼稚園を開園。

日本の保育を真摯に、かつユニークに展開中。

子どもの世界の面白さを語ったら止まらない。

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