かつて優秀な畜産技師として、政府から派遣され各地の国営農場で働いていたグエン・ラム・サウさんの人生は、21年前、上司である幹部職員の汚職を告発して以来、一変してしまった。
1977年、中部高原地方ダクラク省の国営農場に派遣されたサウさんは、やがて権力を悪用して私欲を肥やす幹部らの実態を目の当たりにする。戦後の貧しさの中、苦しむ民衆を顧みないその姿に、サウさんは意を決して彼らの汚職を告発。ところがその後、幹部らは証拠を偽造して、不法売買など数々の罪をでっちあげ、サウさんを容疑者に仕立て上げた。
こうして1985年、突然家宅捜索を受けたサウさんは、身に覚えのない数々の罪に問われ、殺人犯らとともに投獄された。しかしその1週間後、「捜査・処理が完了するまで」として仮釈放されたサウさんは、以後21年間、様々な機関に足を運び、不当逮捕を訴え続けてきた。仮釈放はされたものの、給料や保険は減額され、さらには何者かに家に火をつけられ財産を失うなど、苦難の連続に妻はやがて病気になり、サウさんは子供たちを男手ひとつで育てなければならなかった。
しかし最近になって、ダクラク省人民委員会のルウ・ゴック・ク首席が同省公安局長に対し、サウさんの訴えに基づいて再調査を行うこと、また2006年9月30日までに省人民委員会に結果を報告することを命じる文書を送付した。この知らせを聞いたサウさんは、ついに冤罪が証明され、汚名がそそがれる日が来る、と心から喜んだ。ところが、10月中旬になった現在も、彼の元には何の知らせも届いていない。サウさんの潔白が証明される日を、彼とその家族は今も待ち望んでいる。