先ごろハンガリーで起きたアルミナ精錬工場の鉱滓(こうさい)ダム決壊事故で、ベトナムの中部高原地方で実施される2件のボーキサイト採掘・アルミナ精錬案件が世論の関心の的になっている。2案件の投資主であるベトナム石炭鉱産グループ(ビナコミン)会長のレ・ズオン・クアン商工次官に話を聞いた。
――ハンガリーの事故後の商工省の対応は。
鉱滓ダムの設計については審査評議会での承認を既に得ているが、商工省はさらに第三者の外国のコンサルタント会社に審査を依頼するようビナコミンに指示した。また、有毒汚泥を建設資材としてリサイクルする方法を研究するよう命じた。
――世論は鉱滓ダムの安全性に非常に関心を寄せています。
ダムは3方を山で囲まれた盆地に出口を巨大な堤防で塞ぐ形で建設する。この地域には過去に大地震が発生した記録はないが、それにも備えた耐震設計がされている。ダムの一部が損壊した場合、汚泥のアルカリ溶液が土に染み込む可能性は理論上あり得る。万一のことを考慮して、ダムから半径2キロメートル以内の地域には人を住まわせない方針だ。
――多くの有識者がプロジェクトの停止を提案しています。この提案が正当なものだとしたら、案件の停止について政府に上申すべきではありませんか。
我々は各案件を信頼しており、政府に停止を上申する考えはない。しかし、もし政府から停止命令を受けた場合は停止する。政府次第だ。
アルミナ精錬工場を沿岸地域に移転すべき、という人がいる。技術面でも経済面でもそのほうが合理的だと思う。しかし、共産党政治局は経済面だけではなく社会的要素、つまり中部高原地方の経済社会発展を考慮し工場を同地方に建設するよう求めた経緯がある。
――ダクノン省のニャンコー精錬工場は着工したばかりなので、沿岸地域に移転できるのでは。事故が起きた場合の安全性のほうが経済性より重要ではありませんか。
ラムドン省のタンライ精錬工場はほぼ建設が終わっているので、停止すれば膨大な損害が出る。ニャンコー工場のほうは確かに見直しが可能だが、これまでに相当額を費やしているのも事実だ。ダムの安全性は、山でも沿岸部でも同様に重要だ。沿岸部で流出事故が起きれば人への直接被害は少ないかもしれないが海が汚染される。
――有識者らは関連当局との対話を希望していますが。
これらの案件への理解を深めていただく良いチャンスなので、喜んでお受けしたい。