「男児が欲しくて…」浮気に離婚、男女出生比率不均衡に懸念

2014/12/05 18:23 JST配信

 社会発展研究所(The Institute for Social Development Studies=ISDS)がこのほど発表したデータによると、ベトナムにおける2013年の男女出生比率は女児100に対し男児113となっており、バランスが大きく崩れている。

(C) vietnamnet
(C) vietnamnet

 これが続けば、2050年には50歳未満の男性の12%に当たる約300万~400万人が結婚難に陥ると予想されている。また、これに伴い、結婚の強制、売買春、女性の人身売買といった犯罪にも繋がる様々な社会問題の悪化が懸念されている。

 ベトナムでは、高等教育機関の入学率や企業・政府機関における管理職の比率などの男女格差が小さく、共稼ぎの世帯も圧倒的に多いなど、女性の社会進出が進んではいるものの、国民の大半、特に農村部では男児が好まれる傾向が根強く残っている。

 子宝に恵まれない夫婦よりも男児ができない夫婦の方が、夫方の家族から批判の的になりやすい。女児が何人できたとしても、家族の圧力により夫婦が離婚を余儀なくされたり、男児をもうけるために夫が愛人を作ったりするケースも多い。

 Hさんも、男児が欲しくて愛人を作った1人だ。Hさんと妻の間には、可愛い娘2人がいるものの、男児ができないことから実の両親に離婚を要求された。妻を愛するHさんはそれを断ったが、自分にも家を継がせる男児をもうける責任があると考え、妻に申し訳なさを感じつつも、3億VND(約170万円)を支払い、男児を生むという契約を結んで愛人を作った。その愛人は、1回目の妊娠で女児だということが分かった時点で中絶し、2回目の妊娠でようやく男児が生まれた。嬉しいやら恐ろしいやら複雑な気持ちで、Hさんは妻と2人の娘に合わせる顔がなくなってしまった。

 一方Aさんは、男児をもうけるために60歳を過ぎてから妻と離婚した。娘2人はそれぞれ結婚し、孫もできた。しかしAさんは定年退職後、男児をもうけるために長年連れ添った妻と離婚し、自分より30歳も年下の若い女性と再婚した。Aさんの希望通りに男児が生まれたものの、定年退職後は収入が少ないため、前妻との間に生まれた娘2人に対し、新たに生まれた息子の養育費として毎月300万VND(約1万6700円)を支払うよう求めている。

 Aさんは、「まだ仕事をしていた頃は、同僚から非難されるのが怖かった。でも定年退職した今はもうそんな心配もなくなったため、自分の望むようにしたい。財産は全て息子に譲る」と語った。

 ベトナムでは、日本のように入籍後どちらか一方が相手の名字に変えるということはなく、夫婦共に生まれた時から名乗ってきた名字をそれぞれ維持する。子供の名字は夫婦どちらの名字を使用しても良いが、夫方の名字を使うのが通例となっている。男児がいないということは、自分の家系の「名字」がいつか途絶えてしまうことを意味する。

 現行の法律では、遺書が残されていない場合、男女は平等の相続権を持つと規定されているが、実際には家の財産の大半を男性が相続するケースがほとんどだ。こういった事情から、何かを犠牲にしてでも男児が欲しいというベトナム人男性は大勢いる。また、女性でも男児がいないと「周りに良い顔ができない」、「姑との関係が悪くなる」などの理由から男児を好む傾向が強いようだ。

[Kim Minh, Vietnamnet, 01:00 (GMT+7) 28/11/2014, A]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 男女の産み分けを禁止しているベトナムだが、男児を重んじる慣習は根強く残っており、依然としてソーシ...
 北中部地方タインホア省出身の33歳の一般女性H.H.さんが、独身者向けの出会い系フォーラムで月収3000万...
 ハノイ市における2016年年初5か月の男女出生比率は、女児100人に対し男児114.4人となり、2015年通年よ...
 保健省傘下の人口・家族計画化総局は、人口法草案を策定し意見聴取を行っている。同案には、「年金を受...
 ハノイ市人口・家族計画化支局の統計によると、郊外のいくつかの郡や町における上半期の男女出生比率が...
 男児を重んじるベトナムでは、2012年の男女の出生比が男児112.3:女児100となり、性別の偏りが大きな社...
 保健省の人口・家族計画化総局は25日、新生児の男女比率が男児に偏りすぎていることを解消するため、女...
 12月26日の「ベトナム人口デー」に先立って25日にハノイで開催された会議の中で、保健省は男女出生比率...

新着ニュース一覧

 ベトナム共産党政治局・書記局は20日に開かれた会合で、政治局員・国会共産党連合会書記・国会議長在任...
 住商アグロインターナショナル株式会社(住商アグロ、東京都千代田区)は、ベトナムの農業資材販売会社で...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ベトナム最大の企業管理職向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を運営するアンファベ(Anph...
 午後3時、ハノイ市ハイバーチュン区ファムディンホー街区在住のグエン・ゴック・クアンさん(男性・61歳...
 南部メコンデルタ地方カマウ省人民委員会は19日、ダムゾイ郡でダムゾイ・カイヌオック・チャーラー(Dam...
 ホーチミン市人民委員会は21日、12月の商業運転開始を予定している都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~...
 21日から23日までの日程でマレーシアを公式訪問中のトー・ラム書記長は21日、最高儀礼に則り盛大に執り...
 ドミニカ共和国を公式訪問中のファム・ミン・チン首相は現地時間20日、ルイス・ロドルフォ・アビナデル...
 米不動産サービス大手クッシュマン&ウェイクフィールド(Cushman & Wakefield=C&W)がこのほど発表した...
 南中部高原地方総合病院は19日、自宅で調理したヒキガエルの肉と卵を食べた児童2人が中毒を起こしたと...
 ベトナム国家大学ホーチミン市校(ホーチミン市国家大学=VNU-HCM)傘下の政策開発研究所が先般発表した...
 医療機関向けパッケージソフトウェアの製造・販売を手掛ける株式会社エクセル・クリエイツ(大阪府大阪...
 ハノイ市ナムトゥーリエム区の国立展示建設センター(1 Do Duc Duc, quan Nam Tu Liem, TP. Ha Noi)で、...
 米空軍は南中部沿岸地方ビントゥアン省ファンティエット空港で20日、ベトナム空軍に米国製の練習機「T-...
トップページに戻る