ベトナムの華麗なる一族に捜査のメス、華人系不動産デベロッパー大手VTPの会長が御用 違法社債発行で

2022/10/10 18:20 JST配信

 公安省傘下の密輸経済汚職犯罪捜査警察局(C03)はこのほど、社債の発行・取引で詐欺行為を働いたとして、華人系の不動産大手VTPグループ(Van Thinh Phat Group)のチュオン・ミー・ラン会長(女・66歳)を詐欺・資産横領容疑で逮捕した。公安省事務局長 兼 報道官のトー・アン・ソー中将が8日に明らかにした。

(C)PLO
(C)PLO

 この他、◇ウィンザー・プロパティ・マネジメント・グループ(WMC  Group)のチュオン・フエ・バン社長(女・34歳)、◇ VTP補佐のグエン・フオン・ホン容疑者(女・38歳)、◇タンベト証券(TVSI)元会長でVTP元財務担当副社長のホー・ブウ・フオン容疑者(男・50歳)の3人も、同じ容疑で逮捕され捜査を受けている。なお、ラン容疑者の姪であるバン容疑者は、オーストラリア出身の越僑歌手タイン・ブイの妻として知られている。

 VTPの系列企業であるアンドン投資グループ(An Dong Investment Group)が複数回にわたり違法な社債発行を実施し、容疑者4人がこれに関与したとされる。社債発行総額は明らかにされていないが、報道によると、同社は2018年9月から2019年1月にかけて25兆VND(約1520億円)の社債を発行。このうち、15兆VND(約910億円)を2023年9月に、10兆VND(約610億円)を2024年1月にそれぞれ償還することになっている。公安省は現在、資産の回収に向けて捜査範囲を拡大している。

 ラン容疑者は中国系ベトナム人で、香港出身で英国籍の実業家であるEric Chu Nap Kee氏と結婚している。1991年にVTPを設立し、当局と太いパイプを持っていることから、ホーチミン市内の数多くの一等地を取得してきた。

 VTPとその系列企業は、ホーチミン市内で数多くのレストラン、ホテル、オフィス、マンションなどを経営している。特に有名な案件としては、1区中心部にあるグエンフエ通りの歩行者天国の超一等地に立地する、◇ショッピングセンター「ユニオン・スクエア(Union Square)」(旧:ビンコムセンターA)、◇6つ星ホテル「ザ・レベリー(The Reverie)」を併設した複合施設「サイゴン・タイムズスクエア(Saigon Times Square)」、◇4つ星ホテル「サイゴンプリンスホテル(Saigon Prince Hotel)」、この他、同市7区の大規模都市区案件「サイゴン・ペニンシュラ(Saigon Peninsula)」などが挙げられる。

 また、VTPとコネクションがあるとされるビバランド開発投資(Viva Land Management & Development)は2021年末、建設途中で10年以上放置されていた1区トンドゥックタン通り34番地に立地する高層ビル案件「IFCワン・サイゴン」(旧称:サイゴン・ワン・タワー=Saigon One Tower)を買い取っている。同社はさらに2022年に、ハノイ市中心部の大型オフィスビル案件「キャピタル・プレイス(Capital Place)」と、東北部地方クアンニン省トゥアンチャウ島(dao Tuan Chau)にある複合型リゾート施設案件を買い取っており、華人系の関連企業が好立地案件を次々と買い漁ることを不安視する声が多く上がっていた。

 2013年から2014年にかけて開かれたビナラインズ[MVN](Vinalines:ビナラインズ)の元会長で元交通運輸省航海局長のズオン・チー・ズン被告らによる汚職事件の裁判では、同被告がサイゴン港(ホーチミン市4区サイゴン港ニャーゾン・カインホイ埠頭)の機能移転に伴い展開される不動産開発案件の獲得を希望していたVTPのラン容疑者から受け取った100万USD(約1億4500万円)をファム・クイ・ゴ公安次官に渡したと証言。疑惑の渦中にあったゴ公安次官は、2014年2月に60歳で肝臓がんにより死去している。

 なお、ラン容疑者とバン容疑者を含む一族の計10人は2014年に、ベトナム国籍の放棄を一斉に申請したが、2015年になって申請を取り下げている。

 政府は不正を働く不動産デベロッパーの一掃を目指している。今年3月には、株価操作容疑、詐欺・資産横領容疑で地場系FLCグループ[FLC](FLC Group)のチン・バン・クエット会長を、4月上旬には詐欺・資産横領容疑で地場系不動産開発大手タンホアンミン(Tan Hoang Minh)のドー・アイン・ズン会長 兼 社長(男・61歳)を逮捕した。

 これらを背景に企業各社は社債の新規発行を控えており、社債の買い戻しを強化している。商業銀行も不動産向け融資について慎重な姿勢を見せている。

[VnExpress 10:23 08/10/2022 / NLD 10:30 08/10/2022 / Zing 10:43 8/10/2022 / Giao Duc Thu Do 11:39 08/10/2022 / Thanh Nien 14:16 08/10/2022 U]
※VIETJOは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。
© Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved 免責事項

この記事の関連ニュース

 華人系不動産大手VTPグループ(Van Thinh Phat Group)と密接なコネクションがあるサイゴン商業銀行(SCB)...
 華人系不動産大手VTPグループ(Van Thinh Phat Group)の違法社債発行や、VTPと密接なコネクションがある...
 華人系不動産大手VTPグループ(Van Thinh Phat Group)の違法社債発行や、VTPと密接なコネクションがある...
 華人系の不動産大手VTPグループ(Van Thinh Phat Group)における社債発行・取引関連の詐欺・資産横領事...
 華人系不動産大手VTPグループ(Van Thinh Phat Group)とコネクションがあるとされるボンセン・コーポレ...
 華人系の不動産大手VTPグループ(Van Thinh Phat Group)における社債発行・取引関連の詐欺・資産横領事...
 華人系不動産大手VTPグループ(Van Thinh Phat Group)とコネクションがあるとされるビバランド開発投資(...
 ホーチミン市警察は同市資源環境局宛てに公文書を送付し、捜査の目的で華人系不動産大手VTPグループ(Va...

新着ニュース一覧

 商工省によると、2025年におけるベトナムの輸出入総額は推定で約9200億USD(約144兆円)となり、過去最高...
 ベトナム建設省は19日、ラオカイ~ハノイ~ハイフォン間鉄道建設事業の第1サブプロジェクトの着工式を...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ホーチミン市都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン~スオイティエン間)を運行する同市メトロ1号線有限会社...
 ある日の午後、60代と思われる男性が、壊れたデュポン(Dupont)製のライターを手に、ホーチミン市チョロ...
 軍事ウェブサイトのグローバル・ファイアパワー(Global Firepower=GFP)が発表した2025年版の世界軍事...
 ファム・ミン・チン首相は20日、ペトロベトナムグループ(Petrovietnam=PVN)のレ・マイン・フン会長を...
 再生可能エネルギー事業を手掛けるイーレックス株式会社(東京都中央区)は、同社が開発を進めている西北...
 一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は15日、ベトナムの新たなドローン産業団体であるベトナム低...
 電子機器・電気機械器具の製造・販売を手掛けるコーセル株式会社(富山県富山市)は、海外子会社(非連結...
 ベトナムで初となる軽量軌道交通(LRT)路線が19日、南部メコンデルタ地方アンザン省フーコック特区(島)...
 米国の調査機関World Population Review(WPR)が先般発表した
 ホーチミン市では現在、計1万8613台のタクシーが運行されており、このうち電気自動車(EV)が1万3124台で...
 レ・タイン・ロン副首相はこのほど、「2025~2035年の外国語教育強化計画および2045年までのビジョン」...
 ベトナム国家大学ホーチミン市校(ホーチミン市国家大学=VNU-HCM)の副学長を務めていたグエン・ティ・...
トップページに戻る