ハノイ市ホアイドゥック郡カットクエ村出身の若き実業家グエン・バック・チュオンさんは、29歳にして爪楊枝と木箸の工場を3つ持ち、毎日の収益は2000万VND(約9万9000円)に上る。
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爪楊枝ブランド「チュオンティン(Truong Thinh)」の社長であるチュオンさんは、約20種類もの様々な爪楊枝と竹串を並べて、「これはザン(Giang、竹の一種で、柔らかく折れにくいため人気がある)の楊枝、そっちはチェー(Tre、竹の一種)の楊枝、これは宴会用の楊枝、向こうは結婚式用の楊枝、これは串焼きに使う串だよ」と説明してくれた。
それぞれの楊枝は、市場で1袋500~1500VND(約2.48~7.43円)で販売される。1つ1つの利益は小さいが、この小さな利益が積もり積もって、何もなかった1人の青年を大富豪にしたのだ。
母親から受け継いだ爪楊枝作り
農村で3兄弟の長男として育ったチュオンさんは、家業だった稲作と建設作業の仕事を憂慮し、15~16歳の時に見切りをつけた。20歳の時、チュオンさんは数枚の衣服と数十冊の本だけを持って軍に入隊した。
「私はビル・ゲイツなど著名な経営者の本をたくさん読みました。私は幼少の頃から貧困に苦しむ家族を目の当たりにしてきたので、除隊した時には自分で人生を変えなければいけないと考えました」とチュオンさんは語った。
2009年、チュオンさんは22歳で結婚し、夫婦2人は爪楊枝作りとそのための用具一式、価値にしておよそ500万VND(約2万4800円)相当を母親から受け継いだ。初めて作った爪楊枝を売るために、彼はハノイ市中を走り回った。しかし、これを売りさばくことはできなかった。
「売れずに帰る日が何日間も続き、ある日200袋の注文を受けた時は嬉しくて2人で涙を流しました」とチュオンさんは回想した。チュオンさんは顧客に自分たちの商品を覚えてもらえるよう、パッケージの質とデザインの改良にこだわり、また自分たちの爪楊枝が清潔かつ安全で、他のどの商品よりも一番良い商品になるよう尽力した。
チェーよりもしなやかで特徴的な青さを持つ、西北部地方イエンバイ省産のザンは、外皮を剥がした後に削り、カットし、コンロの火で乾かす。チュオンさんの爪楊枝は、化学物質を一切使用していない。
「化学物質で漂白された楊枝は、不自然な白さで酸っぱい危険な匂いがします。1袋を我々の商品の半値で売ることで脅かしてくる競合もいますが、そういった質の悪い安物は10本の楊枝のうち3本しか使えないこともあります」とチュオンさんは語った。