
「先生方は短期間のうちに、息子が絵を描くことに向いていると見出してくれたんです。驚きました」とロアンさんは話し、いつもナム君が描いた絵をもらっているのだと自慢げだ。
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センター長のブー・バン・チュックさんによると、ナム君はセンターを初めて訪れた時にかんしゃくを起こし、母親は座って話をすることもできなかったという。ナム君が絵を描くことが好きだとわかると、チュックさんはいくつかの絵を彼に見せて興味を引いた。
当初、ナム君の描く絵は上手とは言えなかったが、好きなことが1つでもあるのならば伸ばしてあげたいという思いで、教師たちは環境を整えたのだった。
「ある時、ビントゥイ橋を渡った時に、ナム君が『橋』という言葉を繰り返し口にしたんです。そこで、その橋の写真を見せて、描かせてみたんです」と、ナム君が橋を描くことが好きなのだと知ったきっかけについてチュックさんは語る。
チュックさんとナム君は、主にユーチューブ(YouTube)で試行錯誤しながら独学で学んだ。ハノイ市にあるテーフック橋、ロンビエン橋、チュオンズオン橋、ビントゥイ橋、それから南中部沿岸地方クアンナム省ホイアン市にある来遠橋(Cau Lai Vien、別称:日本橋、橋寺)、南中部沿岸地方ダナン市にあるゴールデンブリッジなどの絵を、興奮気味に3~5枚も続けて描く日もあった。
ある時、チュックさんはナム君に目隠しをしてみたが、それでもナム君は難なくロンビエン橋を描くことができた。「彼は芸術的な手つきではありませんが、視覚化する能力と空間全体を捉える能力がとても優れているんです」とチュックさんは付け加えた。
ナム君は3か月間で115枚の橋の絵を描き、ベトナム版ギネスブックのベトナム・ブック・オブ・レコード(ベトキングス=Vietkings)から「ベトナムの橋をテーマにした絵を最も多く描いた自閉症の少年−115枚」として認定された。
ナム君の絵と母子の物語は、ベトナム現地紙のニャンザン(Nhan Dan)が3月末に主催した自閉症児に関するシンポジウムで紹介された。このイベントでは、ナム君の作品8点が購入された。
チュックさんによると、センターはナム君を自閉症児向けの絵画指導者として育成するつもりだという。ナム君自身も、引き続き様々な橋の絵を描き、世界ギネス記録に挑戦するとともに、生きる力を発信し、自閉症児に対する社会の認識を変えることを目指している。
母親のロアンさんにとって、ナム君のこの節目は誇りであり、希望でもある。「少なくとも今は、他の子供たちと同じようにナムにも好きなことがあって、追いかけるべき道もありますから」と、ロアンさんは誇らしげに語った。