14年越しの喜び、自閉症の息子が見つけた「絵という言語」

2025/05/25 10:26 JST配信

 ロアンさんはナム君が4歳の時に夫と離婚した。ロアンさんは子供を連れて家を出て、部屋を借りた。苦しい生活の中、ロアンさんは息子の学費を稼ぐために昼夜を問わず働いた。「でも、限界でした」とロアンさんは語る。

(C) VnExpress
(C) VnExpress
(C) VnExpress
(C) VnExpress

 ナム君の学費は毎月1000万~2000万VND(約5万5000~11万円)かかり、学費に充てるお金が足りない時は勉強を中断しなければならないこともあった。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行した時にはロアンさんの仕事も影響を受け、ナム君を田舎の祖父母の元に預けたという。

 自閉症児は、毎日適切な療育を受けなければ、行動障害が悪化してしまう。新型コロナの流行が落ち着いた後、ナム君は母親の元に戻ったが、他人の携帯電話を奪おうとしたり、興奮すると手を叩き続けたりするといった行動が癖になっていた。

 そこでロアンさんは、ハノイ市ロンビエン区で寄宿型の療育センターを見つけ、ナム君を通わせることにした。センターでしばらく療育を受けたナム君は、多くの進歩の兆しを見せ、自分の要求をたくさん言葉にできるようになった。

 毎週の送り迎えで母親と一緒にロンビエン橋を渡っていたナム君は、ロンビエン橋に突然心を打たれた。そんな中、センターの活動の一環として描いた橋の絵が、思いがけず200万VND(約1万1000円)で落札された。

 「当時、センターから美術の先生をもう1人雇ってはどうかと言われました。私もぜひそうしたかったのですが、経済的にどうすることもできませんでした」とロアンさんは話す。

 2024年の夏、ロアンさんは学費の約1200万VND(約6万6000円)が支払えなくなり、再び息子を退学させざるを得なくなった。当初、ナム君は自宅で行儀良く過ごし、野菜の下処理や掃き掃除など、色々なことができるようになった。

 しかし8月になると、ロアンさんは息子の性格が以前よりも怒りっぽくなったことに気付いた。そして、怒ると母親の両腕を引っかくようになった。「一番ひどかった時は、息子が自傷行為をして彼の両手が噛み痕だらけになってしまったんです」とロアンさんは語る。

 息子が思春期に入ったのだと察したロアンさんは、適切な環境の必要性を痛感していたが、自分に十分な知識がないことも認めざるを得なかった。専門家によれば、ベトナムでは、自閉症児は幼少期には積極的な支援を受けられるものの、思春期から成人期にかけては支援を受けられるセンターが少なく、保護者も子供を指導する十分な知識を持っていないのだという。

 ハノイ市から約70km離れた東北部地方バクザン省にある療育センターを紹介されたロアンさんは、遠方でも試してみることに決めた。ナム君がセンターに入って1か月後に訪ねてみると、ロアンさんは息子がたくさん運動してエネルギーを発散していることで以前よりも痩せ、同時に規律性も向上していることに気付いた。

前へ   1   2   3   次へ
© Viet-jo.com 2002-2026 All Rights Reserved 利用規約 免責事項

この記事の関連ニュース

 ハノイ市オーチョズア街区(旧バーディン区タインコン街区)のマイアイントゥアン(Mai Anh Tuan)通り254...
 2021年12月、「障がい者が学校に通う権利」というテーマで開催された絵画コンテストで最優秀賞を受賞し...

新着ニュース一覧

 建設省は、マンションの国家技術基準(QCVN 04:2021/BXD)の一部を改正する通達第31号/2026/TT-BXDを発出...
 特定非営利活動法人日本東南アジア言語普及交流協会(J-TAG)は21日、東京都で第9回「実用ベトナム語技能...
慣れない海外生活、急病や事故
何かあってからでは遅い!
今すぐ保険加入【保険比較サイト】
 ハノイ市で22日、5つの新たな都市鉄道(メトロ)プロジェクトと、約5000戸の賃貸住宅3プロジェクトの起工...
 南部地方タイニン省チャンバン街区のチャンバン郵便局の門前に、40年近く前から営業している小さな新聞...
 ホーチミン市警察は、45日間の防犯取り締まり強化期間中に、中国人が主導する複数の越境ハイテク詐欺拠...
 西北部地方ラオカイ省サパにある「サンワールド・ファンシーパン・レジェンド(Sun World Fansipan Lege...
 ベトナム全国の映画館の興行収入データを分析するボックスオフィス・ベトナム(Box Office Vietnam)のデ...
 22日午前、インド海軍のニルギリ級フリゲート「ウダイギリ(INS Udaygiri、F35)」とカモルタ級コルベッ...
 ベトナムのIT最大手FPT情報通信[FPT](FPT Corporation)は、同社傘下のFPT
 株式会社セブン-イレブン・ジャパン(東京都千代田区)は、手軽に異国の味が楽しめる「世界のパン博」シ...
 ホーチミン市人民評議会は、企業支援と物流コスト削減を目的として、港湾インフラ使用料を3年間にわた...
 英国の大学評価機関クアクアレリ・シモンズ(Quacquarelli Symonds=QS)が発表した最新の大学ランキング...
 大型蓄電池の製造・販売などを手掛ける株式会社パワーエックス(岡山県玉野市)はこのほど、ベトナム向け...
 地場ベトナムグリーンハウス(Vietnam Greenhouse)とデンマークのバイオテクノロジー企業であるノボネシ...
トップページに戻る